無料相談はアイシア法律事務所
2016年11月30日

Aisia Law Office Newsletter 2016年11月号(Vol.2)

Aisia Law Office Newsletter 2016年11月号(Vol.2)

1.        はじめに

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

このたび、アイシア法律事務所では、各分野のトピックを集めて、Aisia Law Office News Letter 2016年11月号(第2号)を作成いたしました。アイシア法律事務所の弁護士・スタッフが名刺交換をさせていただいた方を対象に情報提供とご挨拶のために毎月ニューズレターを配信させていただく予定です。

本ニューズレターが皆様の参考になりましたら幸いに存じます。

2.        離婚/男女トラブル:民法における再婚禁止期間の短縮

最高裁平成27年12月16日大法廷判決を受け、民法の一部を改正する法律が平成28年6月1日に成立し、同月7日に公布・施行されました。今回の法改正によって民法733条1項の再婚禁止期間が短縮されました。

従来の民法では女性の再婚禁止期間が前婚の解消又は取消の日から起算して「6か月を経過した後」でなければ再婚できませんでした(「再婚禁止期間」)。しかし、今回の法改正によって再婚禁止期間6か月から100日に短縮されました。

また、前婚の解消時に妊娠していなかった場合にも再婚禁止期間の規定は適用されず、すぐに結婚できることになりました。ただし、前婚の解消時に妊娠していなかったことを証明するためには、婚姻届に民法733条2項に該当する旨の証明書を医師から取得・提出しなければならない点に注意が必要です。

3.        遺言/相続:海外移住者への課税強化

自民党・公明党税制調査会は、相続税や贈与税を回避するために海外移住する富裕層への課税を強化する議論をすすめ、12月にまとめる税制改正大綱盛り込む方針です。

現行相続税法では、各法定相続人の取得金額が6億円を超える場合、6億円を超える部分に対して最高税率55%もの課税がなされます。このため、一部の富裕層は、課税逃れのために相続税や遺産税がない又は税率の低い国や地域に移住してきました。代表的な移住先は、オーストラリア、シンガポールや香港とされています。

富裕層が海外へ移住するのは、現行相続税法において、被相続人と相続人がともに5年以上1年の大半を海外で過ごす非居住者である場合、また外国籍であっても5年以内に日本国内に居住していない場合、海外資産は課税対象とされないためです(「5年ルール」)。

そこで、今回の議論では、富裕層の海外移住を防止するため、この「5年ルール」を撤廃することを検討する方針のようです。現在検討されているのは、非課税とされる最低非居住期間を5年から10年に延長するというものです。具体的な内容は税制改正大綱が決定されなければ分かりませんが、今後の動向が注目されます。

4.        民事信託:広島銀行 民事信託対応のアパートローン創設

広島銀行は、平成28年9月1日、民事信託対応のアパートローンの取扱いを開始しました。賃貸不動産の新築・修繕・増改築や他金融機関からのローン借換え等の資金用途を対象としているものです。

不動産を対象として民事信託を設定していた場合、修繕や建替えの資金が必要となった場合に、財産管理を任せた委託者及び財産管理を行う家族等である受託者(又は受託者のみ)と契約することでアパートローンを利用できることになります。

通常は不動産の所有者である委託者のみしかアパートローンを利用することができません。しかし、民事信託では対象となる財産の所有権は形式的には財産管理を行う家族等である受託者に移転します。そこで、広島銀行の民事信託対応のアパートローンでは、形式上所有権が移転した受託者であってもアパートローンを利用できることにしました。民事信託において受託者がアパートローンを利用して信託対象財産を管理できると便利ですから、同様の商品が他の金融機関からも提供されるか否かが注目されます。

5.        不動産:空き家問題のますますの深刻化

株式会社野村総合研究所の平成28年6月7日付けNEWS RELEASEによれば、平成25年には約820万戸だった国内の空き家数は、平成45年には2167万戸に至り、この間に、国内の住宅総数に占める空き家率も13.5%から30.4%まで上昇する可能性があるとのことです。

空き家数・空き家率の増加が、重大な社会問題となりつつある昨今ですが、この問題に対処するため、法令の整備も進みつつあります。昨年は、空き家対策特措法が完全施行され、市町村長に、空き家の立入調査や所有者への指導・勧告、場合によっては所有者に代わり空き家を除却する権限まで認められました。

また、固定資産税・都市計画税の面からは、一定の空き家について住宅用地の特例が適用されなくなり、負担増が見込まれます。さらに今年は相続した空き家の売却に関する譲渡所得の特別控除制度が創設されました。これらの法改正によって、空き家のまま所有し続ける負担が増加する一方で、空き家の売却の促進及び売却後の空き家の有効活用が期待されます。

政府や地方自治体も様々な面から問題解決に取り組んでいますが、前述の予測値から見る限り、空き家問題は今後もますます深刻化するため、関連するビジネスが隆興することが期待されます。

6.        労働法:佐川急便パワハラ自殺事件地裁判決

仙台地方裁判所は、平成28年10月27日、佐川急便の事業所に勤務していた男性従業員が自殺したのは仕事でうつ病になったことが原因と認定し、遺族による労災申請を認めなかった仙台労働基準監督署長の決定の取消しを命じる判決を言い渡しました。

判決は、自殺の原因について、男性の上司が男性の足元に向けてエアガンを撃ったり、唾を吐きかける等した行為が「業務上許容される指導を逸脱した暴行又は嫌がらせ」であるとして、このことが男性のうつ病の原因だと認定し、男性が「退職を申し出たのに、上司から病状に理解のない支持を受けて引き続き仕事を要求されたことで、強度の心理的負荷を受けた」として、自殺の業務起因性を肯定しました。

先月のニューズレターで紹介した電通過労死事件や本件のように、大企業内の過重労働やパワハラの問題が目立ってきています。今後の日本人の働き方についてどのよう変えていかなければならないのかを考えていく時期に来たのかもしれません。

 

7.        企業法務:JCOM最高裁決定 株式の取得価格は公開買付価格であると判断

最高裁は、平成28年7月1日、株式会社ジュピター・テレコムの多数株主が、同社の株式及び新株予約権の公開買付けを行った後(この時の買付価格を以下「本件買付価格」といいます。)、同社において、公開買付けに応じなかった株式には全部取得条項を付し、同社がその全部を取得する旨の株主総会決議を行った事案について、株式の取得価格を公開買付けにおける買付け等の価額と同額とするのが相当である旨の決定を行いました。

原審(東京高裁平成27年10月14日決定)は、本件買付価格は、本件公開買付け公表時においては公正な価格であったと認められるものの、その後の各種の株価指数が上昇傾向にあったことなどからすると、取得日までの市場全体の株価の動向を考慮した補正をするなどして本件株式の取得価格を算定すべきであり、本件買付価格を本件株式の取得価格として採用することはできず、本件株式の取得価格は本件買付価格を上回るものとしました。

これに対し、最高裁は、公開買付けをする多数株主とこれに応じなかった少数株主との間には利益相反関係が存在すると指摘しつつも、独立した第三者委員会や専門家の意見を聴いたこと、公開買付けに応募しなかった株式も公開買い付けに係る買付け等の価格と同額で取得する旨が明示されていたことなどから、一般に公正と認められる手続により公開買付けが行われたといえるため、取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り、上記株式の取得価格を上記公開買付けにおける買付け等の価格と同額とするのが相当であると判示して、原審を破棄しました。

利益相反構造の潜在する取引においても、公正な手続を踏んだ上で決定された対価は尊重されるべきであるとの原則を示したものであり、本決定の判旨は、株式併合における買取価格の決定や、特別支配株主による株式等売渡請求における売買価額の決定に関する判断にまで及ぶと思われることから、重要な意義を有するものです。