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2016年12月31日

Aisia Law Office Newsletter 2016年12月号(Vol.3)

Aisia Law Office Newsletter 2016年12月号(Vol.3)

1.        はじめに

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

このたび、アイシア法律事務所では、各分野のトピックを集めて、Aisia Law Office News Letter 2016年12月号(第3号)を作成いたしました。アイシア法律事務所の弁護士・スタッフが名刺交換をさせていただいた方を対象に情報提供とご挨拶のために毎月ニューズレターを配信させていただく予定です。

本ニューズレターが皆様の参考になりましたら幸いに存じます。

2.        離婚/男女トラブル:養育費不払い対策として民事執行法の改正が諮問

法務省は、平成28年9月12日、裁判で確定した養育費や損害賠償金の不払いの対策として、債務者の預貯金口座の情報を金融機関に明らかにさせることができるようにする民事執行法の改正を法制審議会に諮問しました。

法改正の趣旨として、(i)離婚後の子供の養育費の不払いが相次いでおり一人親世帯が経済的に困窮している場合が多いという実態を改善すること、及び(ii)犯罪被害者が加害者に請求する場合等のように相手方との接点が少ない場合の口座の特定が困難であることが挙げられます。

現行の民事執行においても財産開示手続(民事執行法196条以下)により口座を調べるという手段は規定されていますが、債務者が期日に裁判所に出頭して開示する必要があるにもかかわらず債務者の出頭について強制力がないため実効性がありません。法改正後は、債権者から裁判所に対し強制執行の申立てがあった場合、裁判所から銀行等に対し債務者の預金口座の有無を照会できるようになり、債務者の預金口座の情報が分からない場合でも強制執行ができるようになるとのことです。

3.        遺言/相続:最高裁 判例変更によって預貯金も遺産分割の対象へ

最高裁判所は、平成28年12月19日、大法廷の決定により、預貯金も遺産分割の対象となるとして従来の判例(最高裁平成16年4月20日判決等)を変更しました( http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf )。

これまで、預貯金債権は遺産分割の対象とならずに相続開始と同時に当然に相続人が相続分に応じて分割取得するとされていました。しかし、預貯金は不動産等と異なって分割が容易で「確実かつ簡易に換価することができる」ため、実務では当事者の同意の上で預貯金債権を遺産分割の対象とする運用がされてきました。

本決定は、実務上の運用を受けて、「共同相続人間の実質的公平を図る」ためには遺産分割の対象となる財産をできる限り幅広くするべきであり、また「現金のように評価についての不確定要素が少なく、具体的な」分割方法を決める場面で調整機能を有する財産を分割の対象とする必要性があるとして、預貯金を分割の対象とするとしました。

今後、預貯金を遺産分割の対象とすると、兄が不動産を取得し、弟が預貯金を取得するというように柔軟な分割が可能となります。また、特定の相続人が生前に財産を贈与されていた場合に生じる不平等が解消されます。他方で、今後は金融機関等は遺産分割協議が成立するまで預貯金の払戻しに応じないことになると思われますので、相続が生じた直後の生活費・葬儀代等の当面の資金を確保するために生前の相続対策の重要性が高まるものと思われます。

4.        事業承継:中小企業庁 事業承継ガイドラインの策定

中小企業庁は、平成28年12月5日、「事業承継ガイドライン」を策定しました( http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2016/161205shoukei.htm )。これは、平成18年に事業承継協議会から発表された「事業承継ガイドライン」を10年ぶりに見直すとともに、中小企業庁から公表することとしたものです。

今回の事業承継ガイドラインでは、事業承継に向けた早期の取組みが重要であるとして、60歳を目安として事業承継に着手すること等を定めております。また、事業承継の早期着手を促すツールとして事業承継診断を紹介しています。

経営者の高齢化が進展し、円滑な事業承継が行われないと貴重な技術・ノウハウが失われてしまうという危機意識が背景にあります。早期かつ計画的な事業承継の取組みを促すために、今後は「事業承継ガイドライン」を活用することが期待されます。

5.        不動産:平成29年度税制改正大綱 タワーマンションの税制改正

政府与党は、平成28年12月8日、平成29年度税制改正大綱(以下「本大綱」といいます。)を取りまとめました。本大綱においては、タワーマンションの所有者にかかる不動産取得税・固定資産税の負担の在り方について、注目すべき改正案が提示されておりますので、ご紹介します。

一般に、タワーマンションでは、眺望の良い高層階ほど、取引価格が上昇する傾向にあります。しかし、税負担の面からは、従前は、高層階ほど取引価格が上昇する傾向にあることが考慮されておらず、実態と税負担に乖離が生じていました。この結果、高層階と低層階で不動産取得税・固定資産税の負担が同じであり、不公平感が指摘されていました。

このような指摘を受け、本大綱は、今後、取引価格の変化の傾向を考慮した補正を行うことを明らかにしています。補正の内容は、具体的には、1階を100として、1階毎に約0.25(正確には10÷39)%ずつ税負担が増加するというものです。この結果、例えば、40階建のタワーマンションであれば、1階の所有者に比べ、約10%程度、税負担が重くなります。

本大綱の改正がなされると、不公平感が解消されるとの声もありますが、他方において、税負担が重くなる高層階の区分所有者には、今後より多くの議決権を認めるべきであるといった声も上がっています。このように、本大綱の改正は、単に税負担の問題に留まらず、他の問題に波及する可能性を秘めています。

なお、高層階の所有者が亡くなった場合にかかる、相続税の課税強化(取引価格と相続評価額との乖離の見直し)の議論については、本大綱では見送られた形となります。

6.        労働法:改正育児・介護休業法が平成2911日から施行

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律を改正する法律(以下「改正育児・介護休業法」といいます。)が平成29年1月1日から施行になります。改正育児・介護休業法は、出産・育児や家族の介護等の時期に男女共に離職することなく働き続けられるような社会の実現を目指すための制度の整備を進めることを目的としており、社会問題化している介護離職の防止や育児と仕事の両立に対する効果が期待されます。

介護離職を避けるための改正としては、介護休業の分割取得、介護休暇の取得単位の柔軟化(半日単位の休暇取得制度への対応)、介護のための所定労働時間の短縮措置、介護のための所定外労働時間の制限(残業の免除)、有期契約労働者の介護休業の取得要件の緩和が定められました。

仕事と家庭の両立支援対策としては、有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和、子の看護休暇の取得単位の柔軟化(半日単位の休暇取得制度への対応)、育児休業の対象となる子の範囲の拡大、マタハラ・パタハラ等の防止措置の新設が定められました。

 

7.        企業法務:東京地裁 提訴請求を受けた監査委員が取締役に対して責任追及の訴えを提起しなかったことについて、善管注意義務違反・忠実義務違反の成立を否定(東芝株主代表訴訟事件)

東京地裁は、平成28年7月28日、東芝の株主が監査委員に対する責任を追及した訴訟において、請求を棄却する判決を言い渡しました。

本件は、東芝の株主が、監査委員らに対し、同社の取締役らについて提訴請求を受けていたにもかかわらず、本件取締役らに対して責任追及の訴えを提起せず、このことが監査委員らが負う善管注意義務・忠実義務に違反すると主張して、東芝に対し損害賠償をするよう請求した株主代表訴訟です。

東京地裁平成28年7月28日判決は、善管注意義務・忠実義務の違反の有無は、当該判断・決定時に監査委員が合理的に知り得た情報を基礎として、同訴えを提起するか否かの判断・決定権を会社のために最善となるよう行使したか否かによって決するのが相当である、との判断基準を示しました。

その上で、裁判所は、少なくとも、責任追及の訴えを提起した場合の勝訴の可能性が非常に低い場合には、会社が提訴に要する諸費用等を負担してまで同訴えを提起することが会社のために最善であるとは解されないから、監査委員が同訴えを提起しないと判断・決定したことをもって、当該監査委員に善管注意義務・忠実義務の違反があるとはいえないと判断しています。

上記判決は、①勝訴可能性、②勝訴した場合における債権回収の確実性、③回収を期待できる利益が、提訴に要する諸費用等を上回るかを踏まえて訴えを提起すべきであるとの学説の立場に立脚したものであり、かつ、過去の同種事例は乏しいことから、先例的価値に富むものといえます。