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2017年2月28日

Aisia Law Office Newsletter 2017年2月号(Vol.5)

Aisia Law Office Newsletter 2017年2月号(Vol.5)

1.        はじめに

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

このたび、アイシア法律事務所では、各分野のトピックを集めて、Aisia Law Office News Letter 2017年2月号(第5号)を作成いたしました。アイシア法律事務所の弁護士・スタッフが名刺交換をさせていただいた方を対象に情報提供とご挨拶のために毎月ニューズレターを配信させていただく予定です。

本ニューズレターが皆様の参考になりましたら幸いに存じます。

2.        離婚/男女トラブル:東京高裁 親権者の指定につき「フレンドリーペアレントルール」の採用を否定

東京高裁は、平成29年1月26日、子どもの親権者の指定について、第1審の千葉家裁松戸支部がフレンドリーペアレントルールを採用して父親を親権者と指定した判決を取り消し、母親を親権者と認めました。

「フレンドリーペアレントルール」とは、同居親が相手方親と子どもの面会交流に協力的であるかどうか、同居親が子どもに相手方親の存在を肯定的に伝えることができるかどうかといった事情を子どもの同居親としての適格性の判断の基準とする原則のことをいいます。第一審の千葉家裁松戸支部判決においては、父親側が母親側に対し面会交流を年100回認めるという、「より寛容な面会交流計画を立てたこと」を理由として、当時子どもと別居中であった父親が親権者と指定されており、フレンドリーペアレントルールを採用した判決として注目されていました。(フレンドリーペアレントルールを判断基準の一つとしたその他の裁判例として東京家裁八王子支部平成21年1月22日審判(家月61巻11号87頁)があります。)

これに対し、東京高裁は、子どもが母親の許で生活していること、及び通学している学校での生活に適応していることを重視し、「長女の利益の観点からみて長女に転居及び転校をさせて現在の監護養育環境を変更しなければならないような必要性があるとの事情は見当たらない」等として、親権者を母親としました。

東京高裁の判断は、現在の養育環境を重視し、これまで実際に子どもを監護してきた者を親権者として優先させるという考え方(継続性の原則)に基づくものと考えられます。しかし、継続性の原則では、子を連れ出して既成事実を作ってしまった場合、相手方の親がその後親権を獲得するのは困難であるとの問題があります。

本件は最高裁に上告されるようであり、最高裁がどのように判断するかが注目されます。

3.        遺言/相続:最高裁 節税目的の養子縁組も有効

最高裁は、平成29年1月31日、節税目的の養子縁組の有効性について、初めて当該養子縁組も有効である旨の判断を示しました。

判例の事案は下記の通りです。被相続人Aが、長男X¹の子X²(Aの孫)と養子縁組を締結し、その後長男X¹との関係悪化のため、養子縁組の離縁届を提出しました。これに対し、X側が離縁の無効を求めて提訴し、離縁の無効が確認されました。離縁無効確認訴訟中にAが死亡したところ、Aの長女Y¹・次女Y²が、養子縁組は、X¹が税理士とともに勝手にすすめたもので、Aの意思ではなかったとして提起した裁判が今回の裁判です。

養子縁組は、従来から、縁組によって相続人が増えると相続財産にかかる相続税の基礎控除額が増えるため、相続税の節税対策の一つとされてきました。他方で、相続人が増えると、相続人1人当たりの相続分が減少するため、節税目的の養子縁組を行うと争いが生じやすいといえます。

本件では第1審は養子縁組を有効と判断し、第2審は養子縁組を無効と判断しました。最高裁は、下級審において判断が分かれた中で、節税目的の養子縁組が有効と初めて判断したものであり、実務的に大きな影響を与えると考えられます。最高裁は、「相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存しうる」として、「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても」、直ちに「当事者間に縁組をする意思がない」とはいえないと判示しました。但し、専ら節税目的で養子縁組をする場合でも直ちに無効とはいえないとされたもので、節税目的の養子縁組すべてを有効としたのではありません。最高裁は、本件事実関係においては、「縁組をする意思がない」との事情はなく、「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとはいえないとしたのであって、「縁組をする意思」がどのようなものかまで判断していないため、事案によって無効となる場合があることは否定されていません。

また、節税対策としての養子縁組は実務上広く行われているところであり、専ら節税目的の養子縁組であっても無効ではないと判断されたことは、かかる実務を支持するものとして大きな意義を有すると考えられます。

4.        AI法務:ジュリスト 自動運転と民事責任に関する特集を掲載

有斐閣が発行する雑誌「ジュリスト」1501号において、自動運転と民事責任と題する特集が掲載されました。

当該特集は、自動運転技術がもたらす効果や現在実用化されている技術について説明した上で、衝突被害軽減ブレーキを例に自動運転にかかる自賠責法上の責任や、販売店・メーカーが負う製造物責任法、民法上の責任について検討したものです。AI技術の発展とともにAI技術の実用化が急速に進んでいます。AI技術を用いた製品が普及することに伴って新たな法令上の課題が生じることが予想されます。当該特集はAI技術に伴う法的責任を分析するために参考になるものと思われます。

今後、自動運転技術の普及が進めば自動運転技術が搭載された車両による交通事故等が生じることも予想されます。このような場合にAI技術に関してどのような法的判断がなされるかが注目されます。

5.        不動産:改正住宅セーフティネット法案が閣議決定

政府は、平成29年2月3日、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案」(通称「改正住宅セーフティネット法案」)を閣議決定しました。

現行法は、住生活基本法の理念にのっとり、低額所得者、被災者、高齢者、障がい者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者(以下「住宅確保要配慮者」といいます。)に対する賃貸住宅の供給の促進を目的として制定されました。

今回の改正案は、高齢単身者の増加、若年層の収入減等の住宅確保要配慮者に関する状況や、民間の空き家・空き室の増加傾向等の住宅ストックの状況を背景事情として、空き家等を活用した住宅セーフティネット機能の強化を目的として制定される予定です。具体的には、賃貸人が空き家等を住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として都道府県等に登録することができるようになる登録制度の導入や、住宅確保要配慮者の入居円滑化に関する措置として、居住支援法人による入居相談・援助、家賃債務保証の円滑化等を定めています。

同改正案は、住宅の供給過剰等を背景に、空室率の上昇等の悩みを抱えている不動産経営者に、新たな選択肢を提示するものとなりえますので、今後の動向が注目されます。

6.        労働法:最高裁が業務を一時中断して研修生を送迎する途中での交通事故による死亡は労災補償法の業務上の事由による災害に該当すると判断

最高裁は、平成28年7月8日、労働者が業務を一時中断して事業場外で行われた研修生の歓送迎会に途中から参加した後、当該業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻る際に、研修生をその住居まで送る途上で発生した交通事故により死亡したことは,労働者災害補償保険法の業務上の事由による災害に当たるとの判断をしました。

業務上の事由による災害に当たると判断した理由として、判決では、①上記労働者が上司より歓送迎会に参加してほしい旨の強い意向を示されたこと、②上記歓送迎会の目的が事業会社の研修生と従業員との親睦を図る目的であったこと、③研修生の送迎は上司により行われることが予定されていたことの3点が指摘されています。

今回の最高裁の判断は本件事実関係を前提としてなされたものであり、今後、業務を中断しての作業中に起きた死亡事故が業務上の事由による災害に当たるかについて、どのような判断がなされるかが注目されます。

 

7.        企業法務:総会資料の電子提供等を認める会社法改正を法制審議会に諮問

金田勝年法務大臣は、平成29年2月9日、会社法改正案を法制審議会に諮問しました。

経済産業省は、平成27年11月より「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」を設置して、株主総会の招集通知等の電子提供、議決権行使プロセスの電子化等に関する検討を進めており、平成28年4月21日には、同会のもとで報告書が取りまとめられております。

同会は、招集通知関連書類(会社法上の事業報告・計算書類等)の原則電子化や、議決権の電子行使プラットフォームの利用、株主総会関連日程の適切な設定(決算日から3か月以内に株主総会を開催するという日本の現行実務のスケジュールの見直し等を含む。)等を検討・提言しており、今回の会社法改正案も、同会の報告書の内容を踏まえつつ、法制審議会のもとでの調査審議が進むものと思われます。

招集手続等の電子化・合理化が進むことにより、企業の側は招集コストの削減を見込めると同時に、機関投資家・個人投資家等も書類の郵送を待たずに資料を確認することができる点や、株主総会への参加の機会がより確保される点において、双方の利便性が高まることが期待されます。

同改正案が実務に与える影響は極めて大きく、今後の動向が大いに注目されます。