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2017年1月31日

Aisia Law Office Newsletter 2017年1月号(Vol.4)

Aisia Law Office Newsletter 2017年1月号(Vol.4)

1.        はじめに

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

このたび、アイシア法律事務所では、各分野のトピックを集めて、Aisia Law Office News Letter 2017年1月号(第4号)を作成いたしました。アイシア法律事務所の弁護士・スタッフが名刺交換をさせていただいた方を対象に情報提供とご挨拶のために毎月ニューズレターを配信させていただく予定です。

本ニューズレターが皆様の参考になりましたら幸いに存じます。

2.        離婚/男女トラブル:大阪家庭裁判所 子どもが面会交流を嫌がったことを理由とする面会交流の不履行に対する間接強制を認容

大阪家庭裁判所は、平成28年2月1日、子どもと面会交流を行うことを命じる審判確定後に同居親が面会交流のために子どもを連れて行こうとしたところ子どもが面会を嫌がったという理由で面会交流が図られなかった事案において、面会交流が1回できなかったごとに8万円の支払いを求める請求を認容すると決定しました。

大坂家庭裁判所は、試行的面会交流においては子が楽しそうに面会交流を行っていたこと、及び家庭裁判所調査官から申立人と子の間の関係に問題がないことを報告する調査報告書があったことからすると、子どもを監護する同居親としては、子どもに対し適切な指導助言をすることによって子どもの福祉を害することなく義務を履行することができると判断しました。

本件では、子どもが面会交流を嫌がっているという理由によって面会交流の実現を図らなかった同居親の責任が問題となりましたが、一度審判により面会交流が認められた以上、同居親に間接強制による心理的強制を加えることは許されると判断されました。但し、本判決のかっこ書きにおいては、面会交流が適切でない場合には別の調停や審判を取るべきであると述べられていることから、同居親としては面会交流を取り消す等の方法を検討すべきことになります。

3.        遺言/相続:平成29年度 相続税制の見直し

自由民主党・公明党は、平成28年12月8日、平成29年度税制改正大綱(以下「本大綱」といいます。)を決定しました。本大綱においては相続に関する税制度の見直しが予定されているため、注目するべき見直しをいくつか抜粋します。

  • 相続税等の財産評価の適正化

相続税法の時価主義の下、実態を踏まえて、以下の見直しがされます。

  • 取引相場のない株式評価の見直し

類似業種比準方式について、配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、現行が1:3:1であるのを1:1:1とする等の改正が行われます。利益金額が株式評価額に対して及ぼす影響が引き下げられたことにより、一時的に利益を抑えることによって株価を引き下げる等の対策の実効性が乏しくなりました。この点は、今後の相続税対策の実務に対して大きな影響を及ぼすものと考えられます。

  • 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し
  • 相続時精算課税制度に係る贈与は、従前は贈与税の納税猶予制度の適用を受けられませんでしたが、贈与税の納税猶予制度の適用を受けられることになりました。
  • 納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、相続開始時又は贈与時の常時使用従業員数に100分の80を乗じて計算した数に1人に満たない端数があるときはこれを切り捨てることとされました。(従前は切り上げることとされていました)。小規模事業者による事業承継において雇用確保要件(5年間平均80%維持)がネックとなっていたところ、端数切捨てによって要件が緩和されることになります。
  • 相続税又は贈与税の納税義務の見直し

被相続人及び相続人の居住地が海外にある場合の相続税制について、従来の5年ルールが撤廃され、10年に延長されることが検討されます。詳しくは、本ニューズレター2016年11月号(Vol.2)をご参照ください。

  • 相続税の物納に充てることができる財産の順位及び範囲の見直し

物納に充てることができる財産の順位について、株式、社債及び証券投資信託等の受益証券のうち金融商品取引所に上場されているもの等を国債及び不動産等と同順位(第一順位)とし、物納財産の範囲に投資証券等のうち金融商品取引所に上場されているもの等を加え、これらについても第一順位とする。

以上について、改正法案が本年度の国会に提出され、審議されることとなり、今後の動向が注目されます。

大綱の概要

http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2017/29taikou_gaiyou.pdf

大綱

http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2017/29taikou_gaiyou.pdf

4.        民事信託:最高裁 信託受託者が所有する信託財産と固有財産に係る賃料債権の差押えを適法と判断

最高裁は、平成28年3月29日、信託契約の受託者が所有する信託財産である土地とその上にある固有財産である家屋に係る賃料債権の差押え(以下「本件差押え」といいます。)を適法であるとする判決を下しました。

旧信託法16条1項は、信託財産に対する強制執行等を原則として禁止しているため、信託受託者の滞納固定資産税について信託財産である土地の賃料相当額部分を差し押さえることは問題があります。本件では、信託財産である土地と信託受託者の固有財産である建物の賃料額の内訳が賃貸借契約において明示されておらず、賃料全体に対する本件差押えは適法かが問題となりました。最高裁は、賃料額の内訳が明示されていないとしても、土地と建物の経済的な価値の割合や利用状況に応じて土地の賃料相当額部分と建物の賃料相当額部分を区分されると判断しました。そうすると、信託受託者の滞納固定資産税のうち信託財産である土地の固定資産税相当額について土地・建物の賃料債権を差し押さえることや、信託受託者の滞納固定資産税に基づいて固有財産である建物の賃料相当額を差し押さえることは問題ないことになります。

最高裁は、(i)以上のとおり本件差押えが旧信託法16条1項に反するのは一部分の限度であること、(ii)国税徴収法63条が債権の差押えは全額の差し押さえをするべきと規定していることに照らすと、本件差押えを適法であると判断しました。

信託受託者が固有財産と信託財産をどのように管理すべきか、信託契約において信託受託者の資料状況が信託財産にどの程度のリスクを生じさせるかについて参考になるべき判例として注目されます。

5.        不動産:三田証券株式会社、証券会社として初めて不動産特定共同事業許可を取得

三田証券株式会社は、平成29年1月19日、不動産特定共同事業法における事業者許可を金融庁及び国土交通省より取得したと発表しました。

不動産特定共同事業法商品、そのうち大部分を占める匿名組合型のスキームは、投資家が匿名組合に出資を行い、匿名組合営業者となる不動産特定共同事業者が当該出資金により実物不動産を取得し運用して得た収益を投資家に分配するというものです。

事業者は通常、不動産会社等の専門家であるため、証券会社として不動産特定共同事業許可を取得するのは初めての事例となります。

三田証券株式会社によれば、同社が同許可を取得するに至ったのは、近年問題となっている空き家対策、東京オリンピックを目前にしたインバウンド需要対応(宿泊施設への用途変換)や地域振興、介護施設の開設など、不動産の再生・有効利用ニーズが高まっており、不動産特定共同事業法を利用したソリューションの可能性が大きいと考えたからとのことです。

本ニューズレター2016年11月号(Vol.2)では、空き家問題の深刻化と共に、関連するビジネスの隆興が期待されるとお伝えしており、三田証券株式会社のプレスリリースは、まさにそうした流れに沿うものと言えそうです。

6.        労働法:厚生労働省が「過労死等ゼロ」緊急対策を公表

厚生労働省は、平成28年12月26日、電通社員過労自殺事件を受け、違法な長時間労働撲滅を目指す緊急対策を公表しました。

対策の骨子は、①違法な長時間労働を許さない取組みの強化、②メンタルヘルス・パワハラ防止対策のための取組みの強化、③社会全体で過労死等ゼロを目指す取組みの強化の3点となっています。

  • ①違法な長時間労働を許さない取組みの強化

是正指導段階での企業名公表制度の強化等の対策がなされました。具体的には、企業名を公表する要件を、従来は(i)月100時間超の違法な長時間労働が(ii)3事業所で確認された場合とされていましたが、今回は(ii)80時間超の違法な長時間労働が(ii)2事業所で確認された場合に引き下げて、悪質な企業の社名の公表を拡大していく方針です。

  • ②メンタルヘルス・パワハラ防止対策のための取組みの強化

精神障害に関する労災が複数認定された企業に対してはその本社に対して個別指導を行うことや、過労自殺等の事案があった場合は改善計画を策定させ、1年間の継続的な指導を行うこと等が策定されました。

  • ③社会全体で過労死等ゼロを目指す取組みの強化

労働者に対する相談窓口である「労働条件相談ほっとライン」を、従前の週6日の対応から、今回は週7日(毎日)の対応にすること等が取りまとめられています。

厚生労働省は、省令や通達の改正により、平成29年1月から順次この緊急対策を実行に移していくとのことであることから、企業にとっては過労死防止のための労働環境の改善は今後の喫緊の問題といえるでしょう。

 

7.        企業法務:日本取締役協会「経営者報酬ガイドライン(第四版)」を公表

日本取締役協会は、平成28年10月26日、「経営者報酬ガイドライン(第四版)」(以下「本ガイドライン改訂版」といいます。)の改訂を公表しました。改訂の背景的事情について、同協会は、コーポレートガバナンス・コードにおいて、報酬方針の開示(コード原則3-1)、中長期のインセンティブ報酬(コード原則4-2)、報酬決定における独立取締役の関与(コード補充原則4-10①)等が含まれたことは大きな前進であると評価しつつも、その内容を見ると形式的な対応も散見され、経営者に規律を持ちつつ、業績向上に強く駆り立てるような実質的な進展があるとは言い難いとしました。その上で、「本ガイドライン改訂版は、日本の真なる競争相手である英独米の報酬ガバナンスの水準を目指すことをベストエフォートアプロ―チとして修正した。」「日本経済の再興の実現のためには、従来の伝統的・固定的な日本型報酬制度では不十分で、成果に応じた報酬制度ガバナンスへの変革が必要と考える」と説明しています。本ガイドライン改訂版における主な変更点は、次のとおりです。

  • ① ペイ・フォーパフォーマンス(PFP)の強化

年次インセンティブ報酬及び長期インセンティブ報酬を拡大します。低業績時の減額が可能となるような制度設計とするとともに、世間水準を大きく上回る基本報酬、退職慰労金、フリンジベネフィット、顧問相談役報酬等の固定的な報酬の支給については行わないこととされています。

  • ② リスク管理

会計不正・修正を未然に防止する工夫として、インセンティブ報酬には、自社株保有ガイドライン、クローバック条項(払い戻し規定)・マルス条項(権利移転前の報酬への強制没収条件)等を設定すること等とされています。

  • ③ 報酬委員会の機能強化

自社の報酬制度の目的の検討を踏まえて、どのような報酬水準・報酬構成比率、PFPの仕組みが適切かを議論して、その内容を開示すること等とされています。

報酬改革が始まったばかりの多くの企業にとっては、同ガイドラインの要求水準は、過度に厳しいものと感じられるでしょうが、同ガイドラインはあえて高い目標を設定することにより、改革の更なる推進を促すものであり、その趣旨・目的・内容において大きな意義を有するものと考えられます。