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2017年5月31日

Aisia Law Office Newsletter 2017年5月号(Vol.8)

Aisia Law Office Newsletter 2017年5月号(Vol.8)

1.        はじめに

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

このたび、アイシア法律事務所では、各分野のトピックを集めて、Aisia Law Office News Letter 2017年5月号(第8号)を作成いたしました。アイシア法律事務所の弁護士・スタッフが名刺交換をさせていただいた方を対象に情報提供とご挨拶のために毎月ニューズレターを配信させていただく予定です。

本ニューズレターが皆様の参考になりましたら幸いに存じます。

2.        離婚/男女トラブル:福岡高裁 離婚時の経済的条件について係争中であるが、離婚自体には合意した原告が署名捺印し、被告により提出された離婚届の届出による離婚が無効であるとした離婚無効確認請求を認容

福岡高裁は、平成29年2月10日、無断で離婚届を提出されたとして離婚無効確認を求めた事案において、原告に離婚意思が認められないとして、届け出による離婚が無効であると判断しました。

福岡高裁は、「原告は、調停委員会から離婚のみで本件調停を成立させることを提案された際にこれを拒んだのであり、本件離婚届が提出されたことを認識した平成25年7月27日からわずか13日後の平成25年8月9日に、協議離婚無効確認調停の申立てをしていることからみても、原告は、経済的精算がなされていなかった平成25年7月16日の段階では、法律上の婚姻関係を解消する意思を有していなかったと解するべきである。」とし、「原告が、被告Y1と再び同居するなどして夫婦として復縁する意向を有していなかったからといって、これをもって、直ちに法的に離婚意思を有していたと解することはできない。」として、原告が離婚届に署名・捺印したものの、被告が原告に無断で提出した離婚届による離婚を無効と判断しました。

本件においては、調停において原告と被告が夫婦関係をやり直すことはできないとの意向を示していたことから、離婚に際しては経済的清算が不可欠であり、離婚等のみを先行して合意することはできないとするのが原告の意思だと認められたことで、届出による離婚は無効とされました。本件では原告に婚姻関係を修復させる意向はなかったのですが、これをもって直ちに法的に離婚意思を有していたと解することはできないと判断されたことは今後の離婚意思の判断の実務に影響を与える可能性があるものとして注目されます。

3.        遺言/相続:最高裁 私道の用に供されている宅地の相続税に係る財産の評価における減額につき、減額を認めなかった高裁判決を破棄

最高裁は、平成29年2月28日、相続財産である土地の一部につき、財産評価基本通達24に定める私道の用に供されている宅地(以下、「私道共用宅地」といいます。)として相続税の申告をしたところ、所轄税務署から貸家建付地として評価すべきとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けた事案について、税務署の主張を認めた高裁の判断には、「相続税法22条の解釈適用を誤った違法がある」として判決を破棄し、東京高裁に差し戻す判断を下しました。

本件土地上には、複数棟の共同住宅が建築されており、インターロッキング舗装が施された幅員2メートルの歩道状空地が存在していました。相続人らは、税務署長に対し、本件歩道状空地は、不特定多数の者の通行の用に供されている私道供用宅地であるとしてその価額を評価せずに、本件相続に係る相続税申告書を提出しました。

高裁は、(i)建築基準法の道路とされているものと異なり、(ii)所有者が事実上一般の通行の用に供しているにすぎないものは、特段の事情がない限り、私道を廃止して通常の宅地として利用することも可能であることから、通常の宅地と同様に利用することができる潜在的可能性を有するから、財産評価基本通達24にいう私道供用宅地に該当しないと判断しました。

これに対し最高裁は、相続税法22条の趣旨にかんがみ、相続税の財産評価において、私道供用宅地に該当するか否かについては、法令上の制約の有無のみならず、当該宅地の位置関係、形状等や道路としての利用状況、これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし、当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か、また、その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるとしました。

この判断基準を本件に当てはめると、本件各歩道状空地は、(i)共同住宅の居住者等以外の第三者も自由に通行していること、(ii)都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり、各共同住宅が存在する限り、相続人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認めがたいこと等を指摘し、これらの事情に照らせば、各共同住宅の建築のための開発行為が被相続人による選択の結果であるとしても、このことから直ちに各歩道状空地について減額して評価をする必要がないということはできないとし、高裁の判断には相続税法22条の解釈適用を誤った違法があるとしました。

相続税の財産評価に際し、建築基準法等による法令の制約がない土地に関し、相続税法22条における客観的交換価値が低下するものとして減額されるべき場合に該当するとされる例が今後も現れるか注目されます。

4.        インターネット:最高裁 検索事業者に対する削除請求の要件を判示

最高裁は、平成29年1月31日、検索事業者が提供する検索結果の削除を求める仮処分命令申立てがなされた事案において、検索結果の提供行為が違法となるか否かについての判断枠組みを示した上で当該事案については申立てを却下する旨の決定を行いました。

申立人は、自己が逮捕された事実等がインターネット上の掲示板に書き込まれたところ、自己の氏名等で検索すると関連するウェイブサイトのURL、表題及び抜粋が検索結果として提供される状況にありました。そこで、検索事業者に対して検索結果の削除を求めたのが本件事案です。

最高裁は、個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は法的保護の対象となる一方で、検索結果の提供は検索事業者の表現行為であり、また検索事業者の役割はインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしているとしました。その上で、最高裁は、検索事業者による検索結果の提供行為が違法となるか否かは、諸々の事情を考慮した上で判断するべきで、当該事実を公表されない法的利益がURL等の情報を検索結果として提供する理由を優越することが明らかな場合に検索結果の削除を求めることができるという判断枠組みを示しました。

検索結果の削除を求められるか否かについては高裁レベルで判断枠組みが分かれる状況でしたが、かかる事案について判断枠組みを示した最高裁決定となります。最高裁は、検索事業者に大きな社会的役割があると評価した上で安易な検索結果の削除は認められるべきではないという観点から、事実を公表されない法的利益が優越することが「明らか」なことを要件として加えたものと思われます。インターネットにおける誹謗中傷等の対策の重要性が高まる中で今後の動向にどのような影響を与えるかが注目されます。

5.        不動産:「平成29年度は買い時」住宅購入検討者の52.8%、FP67.2%が回答

住宅金融支援機構は、平成29年4月20日、「平成29年度における住宅市場動向について」を発表しました。

一般消費者及びファイナンシャルプランナーを対象に、「これから1年以内(平成29年4月~平成30年3月)は住宅の買い時だと思うか」について質問・調査したところ、一般消費者のうち52.8%が「買い時だと思う」と回答しました。さらにファイナンシャルプランナーに限っては67.2%の者が「平成28年度と比べて買い時」と回答したとのことです。

その理由としては、①マイナス金利政策の導入後、住宅ローン金利が一段と低下していることや、②金利先高観、③すまい給付金、贈与税非課税措置等の諸制度の利用が可能であること等が挙げられています。

すまい給付金とは、消費税率引上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設された制度です。住宅取得者の収入(都道県民税の所得割額)区分と適用時の消費税率に応じて給付基礎額が決定されるもので、現行の消費税率を前提にすると最大30万円の給付が認められます。

また、平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合、一定の要件を満たすことを条件に、最大1200万円(平成29年5月現在)までの金額について、贈与税の非課税措置を受けることができます(租税特別措置法第70条の2)。

不動産市況に関しては、近ごろマンションの新規販売の苦戦化が報じられるなど、将来を悲観する声もあります。他方で、住宅ローン金利の一段の低下を背景に、すまい給付金、贈与税の非課税措置、住宅ローン減税等の諸制度を活用して、住宅取得に伴う負担を軽減しながら賢く購入しようとする一般消費者も相当数いることが分かります。

特に消費増税の前後の時期は、法令改正等により新たな制度が創設されたり、時限立法の延長が決定されることがあります。昨年、消費増税の延期が発表された際にも、贈与税の非課税措置の上限について引上げ時期が見送られると共に、住宅ローン減税の終了時期の伸長等が決定されました。

今後も、関連する法令改正や市場の動向が注目されます。

6.        労働法:東京地裁 顧客情報漏洩を理由とする懲戒解雇について、当該懲戒処分は懲戒権の濫用に該当し無効と判断

東京地裁は、平成28年2月26日、証券会社の社員が、顧客情報を漏洩したことを理由として懲戒解雇されたことについて、顧客情報の漏洩は懲戒事由に該当するが、当該社員に背信的な意図がなかった、軽視できない違反行為は反復継続していなかった、漏洩について注意や指導がなされていなかった、弁明の機会が与えられていなかったなどとして、懲戒権の濫用に該当し、懲戒解雇処分は無効であると判断しました。

判断の理由を詳しく見ると、①当該社員の漏洩行為は顧客との間で市場動向等について議論する文脈でされたものであり、顧客情報の伝達それ自体を主たる目的として会話をしていたとは認められず、当該社員が情報提供の見返りに金銭その他の経済的利益を得ようとするなどの背信的な意図を有していたとはいえないこと、②それらの会話は1回の通話の機会に連続してされたものであり、このような態様及び内容の会話が複数の日に反復継続して行われたとは断定できないこと、③当該社員は顧客情報の漏洩に該当する会話をしたとして注意や指導を受ける機会がないまま、突如として、懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇処分を受けたこと、④当該社員は、顧客情報の漏洩について何ら弁解の機会を付与されなかったことが挙げられています。

本判決は、懲戒解雇処分の有効性について判断をするに当たり、行為の背信的意図や反復性の有無といった、行為自体の相当性のみならず、当該社員に対する指導の有無や、弁解の機会の付与といった、社内手続の履行の有無という観点からも検討を加えており、それらを総合的に考慮した結果、懲戒権の濫用を認定したものと考えられます。

使用者が懲戒権を行使するに当たり、当該行使が相当な範囲にとどまるには、どのような社内手続を履行すべきかについて、今後の裁判例の判断が注目されます。

 

7.        企業法務:建設業法令遵守ガイドラインの改訂

国土交通省は、平成29年3月29日、建設業法令遵守ガイドライン(以下「本ガイドライン」といいます。)の改訂を発表しました。

本ガイドラインは、①元請負人・下請負人間の下請契約は建設業法に適合する内容である必要があることや、また、②元請負人・下請負人間において、どのような行為が建設業法に違反するかを具体的に示すことにより、法令違反行為を予防し、元請負人と下請負人との対等な関係の構築及び公正かつ透明な取引の実現を図ることを目的として策定されています。

本ガイドラインでは、たとえば、見積等の透明化に関する建設業法第20条との関係で、「元請負人が下請負人から工事内容等の見積条件に関する質問を受けた際、元請負人が、未回答あるいは曖昧な回答をした場合」は、建設業法上違反となるおそれがある行為事例として、「元請負人が予定価格が700万円の下請契約を締結する際、見積期間を3日として下請負人に見積りを行わせた場合」は、建設業法上違反となる行為事例として、それぞれ紹介されています。

このように、建設業法の諸規定との関係において、複数の参考事例を挙げながら、建設業法違反となる行為が具体的に例示・解説されており、本ガイドラインの内容は非常に有用です。

今回の改訂では、特に下請代金の支払の確保に関する記載内容を充実させることに主眼が置かれ、下請代金はできる限り現金払いが望ましいことや、手形を振り出す場合でも、手形期間は将来的に60日以内とするよう努めるべきことなどが明記されました。

政府は、「下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議」を設置するなどして中小企業の取引条件の改善を進めており、今回の改訂もその流れを汲んだものです。

建設業者としてもこのような時流の変化を踏まえ、自社の取引条件の確認・見直しを進めるよう、迫られているといえそうです。