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2017年6月30日

Aisia Law Office Newsletter 2017年6月号(Vol.9)

Aisia Law Office Newsletter 2017年6月号(Vol.9)

1.        はじめに

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

このたび、アイシア法律事務所では、各分野のトピックを集めて、Aisia Law Office News Letter 2017年6月号(第9号)を作成いたしました。アイシア法律事務所の弁護士・スタッフが名刺交換をさせていただいた方を対象に情報提供とご挨拶のために毎月ニューズレターを配信させていただく予定です。

本ニューズレターが皆様の参考になりましたら幸いに存じます。

2.        離婚/男女トラブル:面会交流を実施しないことについて間接強制として高額の間接強制金の支払いが認められた事例

東京家裁は、平成28年10月4日、子どもとの面会交流が審判で認められたにもかかわらず、夫が子どもとの面会交流に応じない事案において、面会交流1回の拒否につき100万円を支払う旨の決定を行いました。

夫側は、妻側のネグレクトや妻が以前子どもを小学校から連れ出したこと、及び子どもが面会交流を嫌がったといった理由から面会交流は認められないと主張しました。しかし、東京家裁は、これらの事情についてはすでに審判において退けられた主張の繰り返しであるとして、夫側に面会をさせる義務があることを認めました。さらに、夫側の任意の履行を期待することが困難な状況であるとして、夫の資力等(前年度の夫の年収が約2600万円)を考慮の上、面会交流の不履行1回につき100万円を支払うべきであると判断しました。

しかし、夫側は控訴したところ、東京高裁は、平成29年2月8日、原判決につき「夫の態度を考慮すると理由がないものではないが相当ではない」として、面会交流の不履行1回につき30万円と判断しました。

面会交流の拒否をした事案については、面会交流1回の拒否につき間接強制金5万円から10万円程度の支払いが認められることが多かったのですが、本件において東京家裁は、夫側の資力が高いことを主な理由として、面会交流1回の拒否につき100万円という高額な間接強制金の支払いを認めました。東京高裁は30万円まで減額はしていますが、本件のように夫側の資力が高い場合には少額の支払を命じただけでは面会交流の実現が困難であることを認めているものと思われます。

これらの判断を受けて、裁判所が面会交流の実現に向けて、個別具体的に面会交流を拒否した場合の間接強制金の金額を決定する可能性があることから、今後の裁判実務に注目すべきものと思われます。

3.        遺言/相続:最高裁 いわゆる花押を書くことは、民法9681項の押印の要件を満たさないと判断

最高裁は、平成28年6月3日、被相続人が作成した遺言書に、印章による押印がなく、いわゆる花押が書かれていたことから、花押を書くことが民法968条1項(自筆証書遺言)の押印の要件を満たすか否かが争われた事案について、花押を書くことは、印章による押印と同視することはできず、民法968条1項の押印の要件を満たさないと判断しました。

その理由については、自筆証書遺言に押印が必要である趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保することにあるとした上で、我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難いとして、花押を書くことは、民法968条1項の押印の要件を満たさないと判断しました。

従前の判例として、最高裁平成元年2月18日判決は、指印は自筆証書遺言の押印の要件を満たすと判断しました。指印は、その概念自体は明確である上、押印と同様に同じ形象が繰り返し再現されるものであり、また、究極的には個人を特定する機能が高いと言えます。これに対して、花押は、押印のような再現性はなく、個人を特定する機能も高いとはいえないため、花押を指印と同等のものと見ることはできないと考えられます。

本判決は、やや特殊な事例ですが、花押の効力について判断を示したものとして興味深い判決といえます。

4.        金融商品取引法:最高裁 情報源を公にしないことを前提とした公開はインサイダー規制の対象と判断

最高裁は、平成28年11月28日、上場会社の業務執行機関が合併の決定をした旨の重要事実を知り、その公表前に当該株券を買い付けたインサイダー取引の事案において、取引前に本件重要事実を内容とする情報源不明のリーク報道がなされていたとしても、インサイダー取引規制を受けるとして被告人を有罪とする旨の決定を下しました。

インサイダー取引規制は、重要事実を知って有価証券の取引等を行うことが要件ですが、当該取引が重要事実の公表後に行われた場合は規制の対象外となります。

最高裁は、報道機関に対する公表がインサイダー取引規制の対象外となるのは、報道の内容が当該会社の代表取締役、執行役等によって公開された情報に基づくものであることを投資家が確定的に知ることができることを前提としているとしました。その上で、情報源を公にしないことを前提とする報道機関に対する重要事実の伝達は、その主体が当該会社の代表取締役、執行役等によるものであったとしても、インサイダー取引規制の対象外とはならないと判断しました。

インサイダー取引規制の対象外となる重要事実の公表について、最高裁として初めて判断した事例であり、今後の実務で重要な事案として注目されます。

5.        不動産:法務省、相続登記未了土地の調査結果を発表

法務省は、平成29年6月6日、所有者の死亡後も長期間に渡り相続登記がなされていない相続登記未了土地の実態について全国調査(「本件調査」)の結果を発表しました。

本件調査は、大都市、中小土地、中山間地域などの地域バランスを考慮しつつ、自治体の協力を得て選定された全国10か所の地区を対象として実施され、自然人名義の最後の所有権登記から、何年経過したかを調査することにより行われたものです。

その結果、①最後の登記から90年以上経過しているものは大都市0.4%、中小都市・中山間地域7.0%、②70年以上経過しているものが大都市1.1%、中小都市・中山間地域12.0%、③50年以上経過しているものが大都市6.6%、中小都市・中山間地域26.6%と、中小都市・中山間地域において、相続登記がなされないまま放置される傾向が顕著であることが判明しております。

近年、相続登記未了の不動産が数多く存在していることが社会的な関心を集めています。不動産の相続登記が未了であると、所有者の把握が困難であるため、まちづくりのための公共事業の推進を阻害します。また、空き家を増加させる大きな要因の一つとなっていると指摘されています。

法務省は、このことを深刻な問題と捉え、相続登記の手続きの簡素化や、利便性の向上を通じて、解消に取り組んできましたが、今回の調査結果を踏まえ更に引き続き検討を進めていくとしています。

6.        労働法:東京高裁 深夜勤務を含む長距離輸送に従事していたトラック運転手である原告の労働条件に関し、割増賃金の算定方法について説明されていなかったとする原告の主張を退ける

東京高裁は、平成27年12月24日、深夜勤務を含む長距離輸送に従事していたトラック運転手である原告の労働条件につき、割増賃金の算定方法について原告が説明されていなかったと主張した事案において、原告の主張を退けました。

判断の理由は、①被告会社の集団就職説明会において、賃金形態は日給月給制であって、給与は基本給、歩合給である運行手当、割増賃金である各種割増手当などによってなり、詳細は賃金規程によることが説明されていたこと、②被告会社のトラック運転手が提出する運行報告書の各手当別集計欄に記載された金額は、給与支給明細書の各手当の金額となるものであること、③トラック運転手は、各月の給与支給明細書に添付される運行報告書のコピーを確認し、計算間違い等があれば配車担当者等に指摘することになっていたこと等が挙げられています。

本裁判例は、使用者が複雑な賃金体系によって新たに従業員を雇用する場合、当該従業員の従前の職歴を勘案した上で、契約書を作成することはもちろんのこと、就職説明会等において丁寧な説明を実施することが、労働条件をめぐる後々の紛争を予防することを示すものとして、実務上有用なものといえます。

 

7.        企業法務:改正消費者契約法の施行

平成28年5月に成立した「消費者契約法の一部を改正する法律(平成28年法律第61号)」(以下「本改正」といいます。)が、今年6月3日から施行されました。

本法律は、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に伴い、高齢者の消費者被害が増加している社会的背景を踏まえ、改正前の消費者契約法では十分に被害救済を図ることが困難な事案の救済を図ること等を目的として制定されました。

本改正の目玉としては、まず、不実告知取消に関する重要事項の拡大が挙げられます。現行法では、不実告知取消の対象は物品・役務の内容や対価等の契約条件に限定されていましたが、今回の改正では、消費者の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情も重要事項に含まれることが明確になりました。

次に、過量契約取消規定の新設が挙げられます。この規定は、事業者が消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合、消費者が契約を取り消すことができるとするものです。

本改正は、このほかにも、消費者取消権の行使期間の伸長、消費者取消権を行使した場合における返還義務の範囲の明示、法定解除権排除条項を無効とする不当条項規定の新設など、重要な改正点を含んでおります。

企業の契約担当者としては、本改正の内容を理解した上で、自社の取引契約書の規定や営業方法が改正後の消費者契約法に抵触するおそれがないかどうか等を十分にチェックする必要があるでしょう。