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2017年7月31日

Aisia Law Office Newsletter 2017年7月号(Vol.10)

Aisia Law Office Newsletter 2017年7月号(Vol.10)

1.        はじめに

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

このたび、アイシア法律事務所では、各分野のトピックを集めて、Aisia Law Office News Letter 2017年7月号(第10号)を作成いたしました。アイシア法律事務所の弁護士・スタッフが名刺交換をさせていただいた方を対象に情報提供とご挨拶のために毎月ニューズレターを配信させていただく予定です。

本ニューズレターが皆様の参考になりましたら幸いに存じます。

2.        民法:改正民法が平成2962日に公布

民法の一部を改正する法律案が平成29年6月2日に公布されました。今回の改正案は債権法の改正を中心とするものであり、約120年ぶりの大改正となります。この改正法の施行日は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

改正点は多岐にわたりますが、主な改正の内容として、①消滅時効、②法定利率、③個人保証、④定型約款の4項目を挙げることができます。

① 消滅時効について、現行民法は、「権利を行使できる時から10年間」(166条1項、167条1項)が消滅時効期間でしたが、改正民法では「権利を行使できることを知った時から5年間」が経過することにより消滅時効が認められることになり、実質的な消滅時効期間は10年から5年になったということができます。また、職業別の短期消滅時効(現行170条〜174条)や商事消滅時効(商法522条)が廃止となり、上記の一般債権と同じ消滅時効が適用されることになりました。

② 法定利率について、現行法では、法定利率を5%、商事法定利率を6%(商法514条)としていますが、改正民法においては、法定利率を3%とし(改正民法404条2項)、商事法定利率についての条文は削除されることになり、法定利率は3%で統一されることになりました。なお、法定利率は法務省令により3年ごとに見直されます。

③ 保証について、改正民法では、事業のための貸金債務や求償権について個人が保証する場合、保証人が事前に公正証書を作成して保証する意思を表示しないと、保証は無効となることになります(改正民法465条の6第1項、465条の8)。但し、個人が保証する場合であっても、主たる債務者が法人である場合の取締役や株式を過半数有する者等が保証人となる場合等は公正証書がなくても個人保証が認められます(改正民法465条の9)。

④ 定型約款について、改正民法は、特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引で、内容が画一的なことが契約当事者双方に合理的な取引を「定型取引」とし、定型取引のために予め準備した契約条項を「定型約款」と定義づけしました(改正民法548条の2第1項柱書)。その上で、定型約款を契約内容にすることをあらかじめ相手方に示していたとき等の場合には約款の個別の条項について同意がされたものとみなされるとしました(改正民法548条の2第1項各号)。ただし、相手方の利益を一方的に害する条項等は合意がなかったものとみなされます(改正民法548条の2第2項)。

また、定型約款の条項変更につき、(i)相手方の一般的な利益に適合する場合、及び(ii)定型約款の変更が契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、相当性等に照らして合理的な場合には、相手方の同意なく変更できるとしました(改正民法548条の4)。

以上は企業、個人のいずれにとっても影響を受ける可能性がある改正であるため、施行前に改正案について十分に理解を深めておくべきでしょう。

3.        遺言/相続:最高裁 相続税減少を主目的とした養子縁組を有効と判断

最高裁は、平成29年1月31日、相続税の節税対策の一環として税理士が助言した内容に基づき、訴外Aが、訴外Aの孫である被告を自身の養子として養子縁組届に係る届出書を世田谷区長に提出した事案について、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号に言う「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできず、本件においては、本件養子縁組について、縁組をする意思がないことをうかがわせる事情がないため、「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできないと判断しました。

その理由については、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものであることを挙げています。

民法上養子は法定相続人となることから、養子の増加は、相続税の計算上、相続税額の減少といった効果を生じさせます。これまでの下級審裁判例の多くも、相続税額の減少を動機とした養子縁組を有効としており、本判決はそれら裁判例に沿う結論を認めたものといえ、実務上意義を有する判例といえます。

4.        金融商品トラブル:東京地裁 高齢者に対する金融商品取引の勧誘について証券会社の不法行為責任を肯定

東京地裁は、平成28年6月17日、証券会社の担当者が高齢者に対して金融商品の勧誘を行い、4種の仕組債約7000万円を購入させた事案について、当該勧誘が適合性原則に違反するとして証券会社の不法行為責任を認めて、証券会社に対し、約3000万円の支払いを命じる旨を判決しました。

本件において、東京地裁は、(i)本件商品には株価変動リスク・流動性リスクがあり、仕組みが難解であることや、(ii)原告が約78歳の高齢であり、認知症により認知機能が相当程度低下していたこと等を指摘して、証券会社の担当者による勧誘が適合性原則に違反するとしました。その上で、証券会社の担当者や自分の長男に相談することで、本件商品の理解を深めて本件商品の購入を回避できたことについて、原告にも相応の落ち度があるとして過失相殺を行いました。

高齢者が勧誘されるがまま高額な金融商品を購入した場合、本判決に照らすと相当数の事案において適合性原則違反による損害賠償責任が認められるように思われます。高齢化社会の進展と老後の不安に伴って、貯蓄を投資商品で運用される方が増えております。しかし、仕組みが難解な金融商品に投資を行うと、予想外に大きな損害を被ることがあります。このような場合、本判決等に照らして救済を受けられるときもありますので、金融商品トラブルに詳しい弁護士にご相談下さい。

5.        不動産:民泊事業においてもブロックチェーン技術の活用が進む

株式会社シノケングループは、平成29年7月5日、システム開発会社「Chaintope(チェーントープ)」と業務提携し、ブロックチェーン技術を活用した不動産関連サービスの開発を開始すること、その第1弾として、民泊物件の管理にブロックチェーン技術を活用することをプレスリリースしました。同社は、ブロックチェーン技術の活用により、スマートキー等とも連動させ民泊物件のIoT化を推進することで、物件の検索・利用申込・滞在・利用終了までの一連の流れを自動的に創出することができるようになると説明しております。

民泊物件の管理以外にも、不動産取引に伴う契約について、スマートコントラクト(ブロックチェーン上に契約を書き込み、設定された条件が満たされれば、契約を自動で執行する仕組み)を活用すれば、契約書の電子化に加え、資金決済や登記手続を自動化・効率化することができます。積水ハウス株式会社は、今年度内に、スマートコントラクトの仕組みによる不動産情報管理システムの運用を開始するとしており、将来的には銀行、保険、不動産登記、マイナンバーなどとの連携を図りたいとしております。

今般、株式会社シノケングループがプレスリリースしたサービスは、今後も国内外において市場規模を拡大していくと思われる民泊事業にブロックチェーン技術を活用し、スマートコントラクト、IoTを推進するものであり、大きな注目を集めるものと言えそうです。

6.        労働法:最高裁 歩合給の計算に当たり、残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則上の定めは当然に無効となるものでないと判断

最高裁は、平成29年2月28日、タクシー会社の賃金規則(以下「本賃金規則」といいます。)において歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の定めがされているという事案において、そのような定めが当然に公序良俗に違反するとして無効であるとすることができないと判示しました。

本件の第一審及び原審は、本賃金規則における本件規定の有効性につき、労働基準法37条の趣旨に反し、ひいては公序良俗に反するものとして無効であり、売上高等の金額から割増金に相当する額を控除することなく歩合給を計算すべきであると判断しました。

従前の最高裁判例は、労働基準法37条等所定の計算方法によらずに割増賃金を算定し、これに基づいて割増賃金を支給すること自体は直ちに違法とはいえないことを前提に、(i)通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることを要件とした上で、そのような判別ができる場合に、(ii)割増賃金として支払われた金額が労働基準法所定の計算方法により計算した割増賃金の額を下回らないか否かを検討して、労働基準法37条等に定める割増賃金の支払がされたといえるか否かを判断しています。

本判決は、従前の最高裁判例を引用した上で、「当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であると解することはできない」と判示しました。これは、本賃金規則の本件規定が当然無効になるものではなく、上記①及び②の要件を実際に満たすか否かを差戻審において検討すべきであると判断したものです。

今回の最高裁判決は、従前の最高裁判例を確認したものであり、残業手当等に相当する金額を予め控除する旨の賃金規則が無効になる場合を限定したものとして実務上注目されます。

 

7.        企業法務:株式会社ウィルズ、ブロックチェーン技術を用いた株主管理サービスを導入、議決権行使の電子化促進へ

企業の投資家向け広報(IR)情報を提供する株式会社ウィルズは、平成29年7月3日、仮装通貨の基幹技術であるブロックチェーンを活用した株主管理サービスとして電子議決権「WILLs Vote」の実証実験を開始し、同年9月からは商用利用を開始することなどをプレスリリースしました。

同社は、従前より、ウェブ事業「プレミアム優待倶楽部」を通じて、上場企業各社が株主に対し株主優待ポイントを付与し、又は企業アンケートを実施することなどを可能とするサービスを提供してきました。今般発表したサービスは「プレミアム優待倶楽部」と一体となり、個人投資家まで含めた効率的な株主の一元管理サービスを提供することに狙いがあると説明しております。

また、ブロックチェーンを活用した株主管理サービスは本邦初のものであり、ブロックチェーン上で株主の保有株式数に応じた議決権を個々に発行すること等、透明性の高い、なりすましが不可能な24時間リアルタイムでの議決権行使が実現できると説明しています。また、議決権行使の結果は、複数人による署名が行われるまで確認することができないため、セキュアな議決権行使結果の集計が可能になるとのことです。

議決権行使プロセスの電子化促進の重要性は、企業の事務コストの削減や、機関投資家の検討期間の確保等の観点から、かねてより議論されてきました。平成27年に制定されたコーポレートガバナンスコードも、【原則1-2.株主総会における権利行使】の補充原則1-2④において、「上場会社は、自社の株主における機関投資家や海外投資家の比率等も踏まえ、議決権の電子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英訳を進めるべきである。」と定めており、これを受け、議決権の電子行使プラットフォームに参加する上場企業は近年大きく増加しているところです。

そうしたところ、今般の報道は、ブロックチェーンという新技術を用いることで、安全性を高めた形で電子議決権を行使することを可能にする非常に注目できるものといえます。