弁護士の法律相談で無料相談と有料相談の違いを知っていますか? 弁護士に法律相談する方法として、大きく無料相談があります。無料の法律相談と有料の法律相談でどのような違いがあるのか、有料・無料以外に法律相談の内容等は違うのか等を悩まれるかもしれません。また、無料で法律相談を受けるような弁護士は実力がないのではと思われるかもしれません。
結論から言うと、相談内容に応じて無料相談と有料相談を使い分けることをおすすめします。また、無料の法律相談だから弁護士の実力が劣るわけではありません。
本記事では、多数の法律相談を行う弁護士の立場から無料相談と有料相談をどう使い分けるか、実力差はあるのかが5分で簡単に分かるよう解説します。
- 2009年 京都大学法学部卒業
- 20011年 京都大学法科大学院修了
- 2011年 司法試験合格
- 2012年 森・濱田松本法律事務所入所
- 2016年 アイシア法律事務所設立
Contents
無料の法律相談と有料の法律相談を両方提供している
まず前提として、無料相談と有料相談は弁護士の属性、性格や能力で分かれているわけではありません。同じ法律事務所や弁護士でも、無料相談で対応するときも、有料相談しか対応しないときもあります。無料相談と有料相談は、弁護士や法律事務所が提供するサービスの対象や内容が異なるだけです。弁護士や法律事務所のランクや実力を示すものではありません。
無料の法律相談は案件分野が限定されている
一般的に無料の法律相談の対象となるのは特定分野に限定されています。また、法律事務所ごとに無料相談の対象が異なることもあります。
たとえば、A法律事務所では離婚問題は有料相談であるものの、B法律事務所は離婚問題は無料相談を実施しているというケースもあります。なぜ、法律相談が無料・有料という違いが出てくるのかを具体的に説明していきます。
A法律事務所 | B法律事務所 | |
離婚問題 | 有料相談 | 無料相談 |
相続問題 | 有料相談 | 無料相談 |
交通事故 | 無料相談 | 無料相談 |
企業法務 | 無料相談 | 有料相談 |
その他 | 有料相談 | 高額事件のみ無料相談 |
無料相談の狙い=とくに注力したい分野である
原則として、無料で法律相談を実施しているのは、その弁護士・法律事務所が注力している分野であることが多いです。
法律相談を無料で実施すれば、有料相談よりも問合せが増加することが期待できます。無料の法律相談から案件を受任できれば、無料相談を実施している案件分野の受任数が増えることで売上増加・経験値上昇が期待できます。
いわば、無料相談は試食品のようなものです。無料相談で実力、人柄や費用を知って貰って依頼を獲得する狙いがあるのです。
上記具体例だと、A法律事務所は交通事故と企業法務に力を入れたい可能性が高いと言えます。これに対し、B法律事務所は幅広く案件を取扱いたいものの、お金のある企業からは法律相談料を取ろうと考えているのかもしれません。
無料相談はあくまで試食品に過ぎない
法律相談が無料・有料で内容が異なるかについてですが、この点は弁護士・法律事務所によって意見が異なるところかと思います。
しかし、幅広く無料相談を実施している法律事務所に関しては、無料相談と有料相談では自ずからサービス提供の趣旨が異ならざるを得ないと思います。
有料の法律相談とは
有料の法律相談は同一事案で何回も相談できますし、相談のみであなたの悩みを解決することも可能です。また、基本的に有料相談は断られることは少ないでしょう。なぜなら、有料の法律相談は、法律相談自体が弁護士が提供するサービスだからです。
無料無料の法律相談とは
これに対し、無料相談は原則として1回限りであり、内容次第では比較的断られやすいと言えます。
無料相談はあくまで試食品です。デパートで試食品を何回も食べていれば嫌な顔をされるでしょう。また、試食品のみでお腹一杯になることは難しいです。これと同様に、無料相談も何回も対応することは出来ませんし、無料相談のみで問題を解決することは想定されていません。
無料相談と有料相談の違い
無料相談と有料相談の違いを表にまとめると以下のとおりとなります。
基本的に、無料の法律相談は、弁護士に依頼することを前提として、その弁護士の人柄や性格を確認したり、弁護士が提案する解決方針や見込みに納得できるかを判断したりするために利用するものです。
無料相談 | 有料相談 | |
費用相場 | 〇 無料 |
× 30分5000円(税抜き) |
対象 | × 相談対象は限定されており、内容次第ではお断りされる。 |
〇 相談対象は限定されておらず、断られることも比較的少ない。 |
回数・時間 | × 限定されている。 |
〇 とくに限定されない。 |
目的 | 弁護士に依頼するべき内容か、弁護士の提案内容や弁護士費用を確認する | あなたの抱える法律問題を解決する |
調査が必要なものは無料相談できない
また、無料相談は原則として相談内容に対して簡単に回答できる内容に限られます(場合によっては有料相談でも同じ)。これは無料相談の対象となる案件分野が以下のような特徴を持っているからです。
- 比較的定型的な案件処理が可能なため回答しやすい
- 相談回数が多く取扱経験も多いためその場で回答できる
他方で、法律知識や事実関係の調査が必要な内容は無料相談の対象にはなりません。調査が必要な相談に内容は弁護士も労力・リスクが発生するため、気軽に無料で回答することは難しいからです。
たとえば、企業法務案件で、「新たに成立した法律に基づいて、新規ビジネスを行うことは適法か?」という法律相談は簡単に答えることができません。B法律事務所が企業法務は有料相談にしているのは、このような考え方の可能性もあります。
無料の法律相談が断られやすい相談内容とは
無料の法律相談が断られやすい相談内容は、「弁護士に依頼する見込みが低いとき」です。
なぜなら、無料相談は試供品であるため、そもそも試供品から本購入(=弁護士への依頼)に繋がらないなら意味がありません。
また、通常の商品であれば試供品を配ることに手間がありません。しかし、弁護士の無料相談を実施するには、弁護士の貴重な時間が取られます。したがって、気軽に配れる試供品と異なり、弁護士の無料相談は意味がなさそうであれば実施することが難しいのです。
具体的には以下のようなケースでは、無料の法律相談が断られやすいと言えるでしょう。
- 典型的な注力分野から相談内容がずれている場合
- 争われている金額が低いため、弁護士費用倒れになる場合
- 弁護士に依頼する意思がなく、ちょっと聞きたいだけの場合
- 紛争の当事者以外の第三者(親や配偶者等)による相談の場合
- 弁護士が忙しく、現在受任が難しい場合
無料相談と有料相談をどう使い分けるか?
上記を前提として、無料相談と有料相談の使い分けを考えましょう。まずあなたの悩みがどういう案件分野なのか、法律相談だけで悩みを解決したいのかを整理します。
法律相談だけで悩みを解決したいときは?
法律相談だけで悩みを解決したいときは有料の法律相談を利用しましょう。ただし、法テラスや市役所等の無料相談を利用できることもあるのでチェックしてみてください。
無料相談は、弁護士・法律事務所にとっては試供品の提供にすぎません。つまり、無料相談から弁護士に依頼することを期待しているわけで、最初から弁護士に依頼する可能性がなさそうだと弁護士・法律事務所が判断したときは無料相談は断られることになります。
他方で、あなたの悩みを弁護士が解決できるのかを知りたい、弁護士に依頼するか迷っているときは無料相談を利用することが考えられます。
あなたの悩みが主要分野であるときは?
あなたの悩みが主要分野であるときは、無料相談をご利用ください。
主要分野とは数多くの弁護士が注力している分野です。主要分野としては、離婚・不倫問題、相続トラブル、債務整理・過払い金、交通事故(被害者側)、企業法務が挙げられます。
主要分野に悩んでいて弁護士に依頼するか迷っているようなときは無料相談がおすすめです。
あなたの悩みが主要分野でないときは?
あなたの抱える問題や悩みが主要分野でないときは、そもそも取扱経験のある弁護士が限られてしまうため、無料相談・有料相談を問わずに当該分野に強い弁護士を見つけたら法律相談した方が良いでしょう。
参考:無料相談と有料相談の使い分け
法律相談だけで解決したい | 弁護士に依頼するか迷っている | |
主要分野の悩み | 有料相談 | 無料相談 |
主要分野の悩みでない | 詳しい弁護士であれば無料・有料問わずに相談するべき |
無料の法律相談と有料の法律相談の違いを把握する!
本記事では、弁護士による無料相談と有料相談にどのような違いがあるかを解説しました。無料相談と有料相談のどちらを利用しようか迷っているあなたの悩みや不安を解消するために参考にしてください。有料の法律相談は、それ自体が商品であり、その中であなたの悩みを解決できます。これに対し、無料の法律相談は試食品のようなものであり、基本的に弁護士に依頼することを前提としています。
無料相談が適切な相談内容は限定されるため、無料相談できると思っても断られることも少なくないので無料相談をするときは注意が必要です。本記事があなたの参考になりましたら幸いです。