M&Aとは? なんの略か何をするかを売り手目線で分かりやすく解説

M&Aとは? なんの略か何をするかを売り手目線で分かりやすく解説

M&Aとは? なんの略か何をするかを売り手目線で分かりやすく解説

 

執筆者:弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

  • 2009年 京都大学法学部卒業
  • 20011年 京都大学法科大学院修了
  • 2011年 司法試験合格
  • 2012年 森・濱田松本法律事務所入所
  • 2016年 アイシア法律事務所設立

M&Aとは

 

M&Aとは分かりやすく説明すると会社や事業を売買することです。株式譲渡、事業譲渡・株式分割、合併などを利用して、会社や事業を売り手から買い手に移すことです。M&Aには会社全体を売却する場合や会社の事業の一部を売却する場合のいずれもあります。

 

M&Aの意味

M&Aは会社・事業の売買であるため、売り手と買い手がいます。M&A=企業買収とも言われますが、実務においては売り手が主導権を握ることが多いです。売り手にとっては会社売却・株式譲渡であり、買い手にとっては企業買収という意味になります。

この記事では中小企業のオーナー様を読者と想定し、売り手目線でM&Aについて解説します。

 

M&Aはなんの略か

M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略です。Mergers=合併、Acquisitions=買収であるため、日本語に直訳すると企業の合併・買収という意味になります。

もっとも、M&A実務においては「株式譲渡」により会社全体を売却するケースが大半です。そのため、M&Aがなんの略かはあまり実態に即していないと思われます。

 

M&Aの読み方・発音

たまにご質問をいただきますが、M&Aの読み方・発音は「エムアンドエー」です。なお、Mergersは「マージャーズ」、Acquisitionsは「アクイジションズ」と読みます。

 

M&Aとは何をすることか?

 

M&Aの種類・手法を分かりやすく説明すると…

具体的にM&Aで何をするかですが、M&Aの種類・手法によって異なります。M&Aの種類・手法は様々ですが、基本的には弁護士・会計士等の専門家に相談しながら決めます。やや専門的な内容になるため、ここでは分かりやすく簡単に整理します。

 

01 会社全体の売却

会社全体を売却する方法として、株式譲渡、合併、株式交換・移転などがあります。M&A案件のほとんどは株式譲渡により会社全体を売却するケースです。

株式譲渡によるM&Aでは、売り手(=株主)は株式の譲渡代金を取得して経営から退き、買い手は株式の全部を取得して経営を引き継ぐことになります。

 

02 事業の一部の売却

会社が複数の事業を行っているような場合などで、事業の一部を売却するM&Aもあります。事業の一部を売却する方法としては、事業譲渡、新設分割+株式譲渡、吸収分割などがあります。

新設分割によって一部の事業を切り出して子会社化し、子会社の株式を譲渡する方法が最も法律関係が分かりやすいと思われます。この場合、売り手(=会社)は事業の売却代金を取得し、買い手は譲渡対象事業を保有する子会社の全株式を取得して経営を行うことになります。

 

売り手がM&Aでするべきこと

M&Aで売り手がすることは、①会社・事業の売却代金を算定する、②会社・事業の売却先を選ぶことです。なお、細々として手続きについては別途解説します。

 

01 会社・事業の売却代金の算定

M&Aの売り手は会社・事業を売却して代金を得ることになります。そのため、どの程度の売却代金が適正かを最初に算定する必要があります。売却代金が安すぎると損をしてしまいますし、他方で高すぎると買い手が見つからないため価格算定は難しい問題です。

会社・事業は相場があるわけではないため、個別具体的な事情に基づいて1件ずつ価格算定をする必要があります。売上・利益に基づいてある程度の目安はありますが、最終的には専門家と相談しながら決めることになります。

 

02 売却先を選ぶ

また、M&Aは売り手が主導権を握ります。そのため、売り手としては買い手候補の中から売却先を選ぶことができます。

長年育てた会社・事業を本当に買い手に任せて良いかを見極める必要があるのです。とくに会社の理念・方針を理解してくれるか、従業員の雇用を守ってくれるかなどは気にする経営者が多いです。また、高い譲渡価格を提示する買い手がファンドである、長年のライバル企業である場合は心理的に抵抗があるかもしれません。このような場合は、多少安くても他の買い手に売却することを選択することもあり得ます。

 

買い手がM&Aでするべきこと=デューデリジェンス

M&Aの細かい手続きはありますが、買い手が一番気にするのは「本当に会社が価格通りの価値があるのか?」です。会社の弱み、欠点や隠された負債があるリスクがあるためです。

そのため、M&Aにおいて買い手は「デューデリジェンス」を行います。デューデリジェンスとは、会社を買う前にきちんと調査をすることです。

売り手としては、買い手が行うデューデリジェンスに対応する必要があります。ビジネス・会計・法律などの観点から様々な質問をされたり、資料を求められたりします。最終的に会社・事業を売却する前であり、本当に買ってくれるか分からない段階で買い手候補から根ほり葉ほり調査をされることに抵抗があるかもしれません。しかし、買い手にとってデューデリジェンスは非常に重要であるため、売り手としても対応しなければM&Aを成功させることはできません。

 

M&Aの理由・目的

 

近年、M&Aは増加しています。会社・事業を売却する理由・目的としては以下のようなものが多いようです。

 

01 事業承継対策/後継者不足対策

長年、会社を経営してきたものの、子どもは他分野で活躍しているため後継者が居ないという悩みはよくあるM&Aの理由です。会社・事業を買い手企業に委ねることで、事業承継問題・後継者不足の問題を解決することができます。

 

02 事業の選択と集中

一部の事業を売却するM&Aでは、事業の選択と集中が理由であることが多いです。不採算事業や不得意分野を売却し、売却代金を好調事業・得意分野に投資することで会社を発展させることができます。

 

03 赤字・債務超過の企業売却

また、赤字・債務超過の企業を売却するケースもあります。会社・事業を清算するためにもコストがかかります。ただし、当然ですが赤字・債務超過の企業を売却するのは困難な場合が少なくありません。

 

まとめ:M&Aは会社・事業を売却すること

 

M&Aは、Mergers and Acquisitionsの略であり、日本語に直訳すると「合併と買収」です。売り手目線で言えば会社・事業を売却して代金を得ることになります。

M&Aは大きく分けると会社の全株式を譲渡して会社を丸ごと売却する場合や、会社の事業の一部を切り出して売却する場合があります。

 

後継者不足や事業の選択・集中のために会社・事業を売却することがM&Aです。分かりやすくM&Aを説明しましたが、適切な種類・方法を選び、細かな手続きをするためには高度な専門知識が必要です。

M&Aを実施しようと考えた場合は、まず信頼できる専門家に相談することをおすすめします。

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