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2020年1月3日

カルロス・ゴーン氏のレバノン逃走についてニューヨーク・タイムズ紙から取材を受けました

カルロス・ゴーン氏のレバノン逃走についてニューヨーク・タイムズ紙から取材を受けました

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カルロス・ゴーン氏のレバノン逃走についてニューヨーク・タイムズ紙よりアイシアホウリツジムショ坂尾陽弁護士が取材を受けました。

(参考)ニューヨーク・タイムズ紙:Carlos Ghosn Flirted With Hollywood, Then Delivered a Plot Twist

1.     カルロス・ゴーン氏のレバノン逃走とは

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カルロス・ゴーン氏は、ルノー・日産・三菱アライアンスのCEOを務めていましたが、2018年11月に金融商品取引法違反の容疑で逮捕され、その後保釈されました。

保釈にあたっては海外渡航禁止が条件として付されていたと報道されていますが、2019年12月31日に日本から脱出し「私はレバノンにいる」との声明を発表しました。

なお、カルロス・ゴーン氏は楽器ケースに隠れて逃走をしたとも報道されていますが、現時点は真偽不明の情報となります。

2.     カルロス・ゴーン氏のレバノン逃走に対する意見

544_代表弁護士編集済

2.-(1)  逃走を正当化できるか?

カルロス・ゴーン氏のレバノン逃走に対しては様々な観点から意見が述べられているようです。とくに、逃走直後の声明において、日本の刑事司法に対する不信感が逃走の理由である旨が言及されていたことから、法曹界においても注目されています。

本件に関しては、法律家/弁護士としては、具体的な事実関係が明らかではないもののカルロス・ゴーン氏が正規の手続によって日本から出国したとは考えられないため、カルロス・ゴーン氏のレバノン逃走を正当化することは難しいと考えます。

他方で、カルロス・ゴーン氏としては、日本の刑事手続から逃れるために、なりふり構わず逃走を図ったということなのだろうと思われます。異国の地において長期の身柄拘束をされていたところ、保釈をされたことをきっかけに、入念に準備をした上でわずかな逃走の機会を捉えた点に執念を感じます。

2.-(2)  日本の刑事司法に対する不信感とは

カルロス・ゴーン氏はレバノン到着後の声明において、「日本の司法制度は、国際法や条約のもとで守らなくてはいけない法的な義務を目に余るほど無視しています。」と述べています。

つまり、日本の刑事司法に対する不信感がレバノン逃走の理由になったことを明確にしています。

(参考)【声明全文】ゴーン被告「私はレバノンにいる」渡航禁止も出国

具体的に、どのような問題点があるかについてカルロス・ゴーン氏は全てを明確にはしていません。

もっとも、声明においては、「もはや私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなります。」と述べられていることから、

  • ①高い有罪率
  • ②差別のまん延
  • ③基本的な人権の無視

等に不信感を抱いているのだと推測されます。

少なくとも、有罪率が高い点については、一般的にはそもそも無罪の可能性がある被疑者を起訴しないという謙抑的な運用が取られているためと考えられており、必ずしも日本の刑事司法の問題点とは考えられていないように思われます。

他方で、取り調べ段階で弁護人の立会いが認められていない点、安易に長期な身柄拘束がなされる傾向がある点等は問題点として指摘されているようです。

カルロス・ゴーン氏はレバノン逃走後は積極的に情報発信をしているようであり、今後はどのような問題点を感じていたのか明らかになろうかと思います。

本件が、日本の刑事司法を見直すきっかけになることは十分考えられるのではないでしょうか。

3.     今後の見通しについて

カルロス・ゴーン氏は、2018年12月にグレッグ・ケリー氏・日産自動車とともに金融商品取引法違反で起訴されており、さらに2019年1月に特別背任罪で追起訴されているようです。

カルロス・ゴーン氏に関するこれらの刑事手続については今後どうなるのでしょうか。

カルロス・ゴーン氏が日本国外に出国しておそらく日本には一生戻ることはないと思われます。

なお、日本と犯罪人引渡条約を締結しているのは、アメリカと韓国だけです。従って、レバノンは日本と犯罪引渡条約を締結しておらず、カルロス・ゴーン氏を日本に引き渡すことは期待できないでしょう。

このことを前提とすると、カルロス・ゴーン氏を対象とする刑事手続は進展させることができず、最終的に被告人死亡によって終結するのではないかと思われます。

4.     カルロス・ゴーン氏の弁護団の責任について

4.-(1)  日本最強弁護団に相応しい弁護活動

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カルロス・ゴーン氏のレバノン逃走について、弁護団の責任を問う声も上がっているようです。

カルロス・ゴーン氏の現弁護人は、弘中惇一郎弁護士・高野隆弁護士・河津博史弁護士とされており、保釈決定が出た段階でも最強の弁護団として報道されていました。

(参考)ゴーンの海外逃亡を「日本最強弁護団」は阻止できなかったのか

たしかに、カルロス・ゴーン氏の保釈が認められたのは、弁護人の尽力するところが多かったと言えます。

カルロス・ゴーン氏の弁護人は、以下のように異例とも言えるような厳格な監視体制を提案して保釈を勝ち取りました。

  • 弁護士がパスポートを保管
  • 住居の玄関に監視カメラを設置
  • 携帯電話は弁護士提供のインターネットに接続できないもののみ使用
  • パソコンも弁護士事務所の端末のみ使用
  • 監視カメラや通話履歴/インターネット履歴を裁判所に提出

(参考)ゴーン被告出国 事件の経過と「保釈条件」とは

結果的には、弁護人の尽力にもかかわらず、カルロス・ゴーン氏は監視の目をかいくぐってレバノンに逃走してしまいました。

しかし、カルロス・ゴーン氏の弁護人としては、依頼者の早期身柄拘束を図るために最善の弁護活動を行うことは当然です。

結果的に最悪の結果になったものの、異例とも思える措置を提案して保釈を勝ち取ったことに対しては惜しみない賞賛が送られるべきことに変わりないように思われます。

4.-(2)  弁護人が逃走に協力したことはあり得ない

また、弁護人はカルロス・ゴーン氏の逃走を知って保釈に協力をしたのではないかと言われることもありますが、ほとんどあり得ない疑いだと言って良いと思われます。

弘中惇一郎弁護士は「寝耳に水だった」とコメントをしているようですが、おそらく真意であり弁護団としても想定外の事態だったものと思われます。

弁護士の立場からすれば、保釈中の被告人が逃走することは非常にショックが大きいことだと言えます。カルロス・ゴーン氏の逃走によって残念な結果になった弁護団の先生方に対しては同情を禁じ得ません。

4.-(3)  弁護人がカルロス・ゴーン氏の逃走について責任を負うか

他方で、カルロス・ゴーン氏の逃走について弁護人が何かしらの責任を問われることもほとんどあり得ないと考えます。

率直に言えば、保釈中の被告人が逃走したことについて弁護人が何かしらの責任を負わなければならないとしたら、弁護士は怖くて保釈請求なんかできないでしょう。

5.     まとめ

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カルロス・ゴーン氏の逃走についてニューヨーク・タイムズ紙から取材を受けたため、本記事を執筆しました。残念ながら電話取材でお話しした内容は記事中には引用されず残念でした。

もっとも、本件について再度考えをまとめるきっかけをいただいたことで、メディアの皆様から取材いただくことができたのは良い機会となりました。

※なお、ニューヨーク・タイムズ紙から取材を受けたことを公開して良いことは確認を得ております。

本件は、国際問題に発展しかねない重要な問題です。本件をきっかけとして、日本の刑事司法について議論がなされると考えられますが、刑事司法の一翼を担う弁護士として努力し続けるべき課題もあろうかと思います。

今後の展開が注目されます。

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