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2020年1月20日

めざましテレビ出演:坂尾陽弁護士が旅館の無断キャンセル(ノーショー)についてコメント

めざましテレビ出演:坂尾陽弁護士が旅館の無断キャンセル(ノーショー)についてコメント

栃木県の高級旅館で無断キャンセルが相次いだ事件について、アイシア法律事務所の坂尾陽弁護士がフジテレビ「めざましテレビ」(2020年1月20日放送分)にコメントしました。

本件事案は、栃木県において正月に7軒の高級旅館で同一人物が各10名分の予約を取ったものの無断キャンセルをしたそうです。無断キャンセルによる被害総額は約250万円にもなるということでニュースとなりました。

(参考)正月の高級客室、無断キャンセル…同じ名前で5施設予約・連絡つかず

近年、無断キャンセル(ノーショー)の問題が社会的に注目されています。無断キャンセル(ノーショー)についてキャンセル料は請求されるのか、犯罪になるのか等について解説します。

1.      無断キャンセル(ノーショー)とはどのような問題か

1.-(1)  無断キャンセル(ノーショー)とは

無断キャンセル(ノーショー)とは、飲食店、旅館・ホテル、美容院等において、予約したにもかかわらず、キャンセルの連絡がないまま予約者が現れないことを言います。

ここでポイントになるのが「キャンセルの連絡がないまま」という点です。この点がドタキャンとは違う点です。

1.-(2)  無断キャンセル(ノーショー)とドタキャンの違い

キャンセルの連絡がなければ、予約時間を過ぎても遅れて来店する可能性があるため待ち続ける必要があります。

例えば、他のお客様が来店しても予約が残っていればお断りせざるを得ません。また、急なキャンセルがあったとして他のお客様に告知をして集客する等の対応もできなくなります。

無断キャンセル(ノーショー)は、当日又は予約日時になった段階でもキャンセルの連絡があるドタキャンとはこの点が違います。

ドタキャンに比べて、無断キャンセル(ノーショー)はお店にかかる迷惑の度合いが大きいのです。

1.-(3)  社会問題として近年注目を集めている

無断キャンセル(ノーショー)は過去においても存在しました。しかし、SNSの発達等により、最近はとくに社会問題として注目を集めています。

例えば、Twitter等では無断キャンセルがあったことをお店が広く拡散するとともに、来店を呼びかけることも一般的になってきたようです。

また、経済産業省としても2018年11月1日付で「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」を公表し、無断キャンセル(ノーショー)は官民一体となって対応する動きが見られます。

(参考)経済産業省:No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート

ここでは飲食店に置いていますが、無断キャンセル(ノーショー)はホテル・旅館・美容室等にも当てはまる問題です。

今までは、お店が泣き寝入りをせざるを得なかった無断キャンセル(ノーショー)ですが、社会的問題として認知されつつあり、今後は厳しい対応が取られることが予想されます。

2.      法律上、お店はキャンセル料を請求できるのか?

テレビにおいては「全額のキャンセル料を請求できる可能性が高い」旨をコメントさせていただきました。

無断キャンセル(ノーショー)が起きた場合、どのような法的根拠からお店はキャンセル料を請求できるのでしょうか。また、キャンセル料を請求するときの法律上、実務上の問題について次から解説します。

2.-(1)  キャンセル料が請求できる法的根拠

キャンセルによってお店に損害が生じたときは、何かしらの損害賠償を請求できると考えられます。キャンセル料とは、法律上は債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求と整理されます(民法415条、民法709条)。

インターネット、電話等の予約方法に関わらず、お店と顧客の間でどのようなサービス・料金かについて内容が確定していれば予約時点で契約が成立していると考えられます。この場合、無断キャンセル(ノーショー)は債務不履行となります。

もし内容が確定していなくても、無断キャンセル(ノーショー)によって故意又は過失でお店に損害を与えた場合には不法行為が成立します。

従って、何かしらのキャンセル料が請求できるのです。

もっとも、どの程度のキャンセル料を請求できるかは、契約内容や個別事案の損害によって異なります。

とくにキャンセルポリシーの有無によって場合を分けて解説します。

2.-(2)  キャンセルポリシーがある場合

キャンセルポリシーがある場合は、定められたキャンセル料を支払うことになるのが原則です。キャンセルポリシーにおけるキャンセル料の条項は「損害賠償額の予定」(民法420条1項)と言われます。

キャンセル料=損害賠償の金額が予め契約で定められているため、契約に従って当該金額を支払うのが原則です。

もっとも、お店と顧客の契約には消費者契約法が適用されます。そして、消費者契約法9条1項は、「損害賠償額の予定」条項を制限しています。

具体的には平均的な損害を超える部分は無効とされています。従って、例えば正規料金の2倍を超えるようなキャンセル料を定めたとしても無効だと判断されるでしょう。

2.-(3)  キャンセルポリシーがない場合

キャンセルポリシーがない場合は具体的にどのような損害が生じたかを個別具体的に判断することになります。

例えば、飲食店、旅館・ホテルに1週前にキャンセル連絡をしたものの、他のお客様が来店したときは損害が生じていないと言えるでしょう。

しかし、無断キャンセル(ノーショー)の場合は、他のお客様で埋め合わせることが著しく困難だと考えられます。

従って、原則としては予約時点で支払うべき金額が損害として生じるため、当該金額をキャンセル料として請求できるケースが多いように思われます。

もっとも、飲食店で席だけを予約したケースでは、予約時点では金額が確定していません。このような場合は、例えば平均的な客単価から原材料費・人件費等を控除した金額がキャンセル料の目安となると考えられます。

3.      実務上、キャンセル料を請求するハードルが下がっている

以上の通り無断キャンセル(ノーショー)をしたときは、法律上、キャンセル料を請求できると考えられます。また、実務上も最近はキャンセル料を請求するハードルが下がっていると考えられます。

3.-(1)  お店が泣き寝入りをしなくなった

過去においては無断キャンセル(ノーショー)が生じても、強硬にキャンセル料を請求して悪評が立つことをおそれてお店としては泣き寝入りせざるを得ませんでした。

しかし、近年、無断キャンセル(ノーショー)は悪質な問題だという認識が高まり、また、お店もSNSで無断キャンセル(ノーショー)について発信する等の対抗措置を取れるようになりました。

そのため泣き寝入りをせずにキャンセル料をきちんと請求するお店も増えてきたように感じます。

3.-(2)  予約者の身元確認

キャンセル料を請求するときに実務的に問題になるのは予約者に連絡が取れなくなることです。

しかし、匿名や偽名で予約をしても電話番号が分かっていれば弁護士であれば氏名・住所等を調査することができます。

最近では電話予約であれば発信番号でディスプレイに表示して、予約者が申告する電話番号と照合する等で確認を徹底するお店も増えているようです。

その他にも、ITを活用してSMSで予約確認メールを送る、クレジットカードの事前登録を促す等のシステムも登場しています。

お店側の対応によって、無断キャンセル(ノーショー)が生じたときにキャンセル料を請求するハードルは下がっていると言えるでしょう。

3.-(3)  無断キャンセル(ノーショー)に対応する弁護士の登場

キャンセル料を請求する場合、予約者に対して電話・書面で請求をする必要があります。本業で忙しいお店としては、キャンセル料を回収するのに手間や時間をかけることは難しいでしょう。

また、偽名での予約であれば予約者の氏名・住所を調査するしなければなりません。

従って、キャンセル料を請求するときは弁護士に依頼するのが現実的な選択です。

もっとも、顧問弁護士が居るお店であればともかく、そうでなければ少額のキャンセル料請求だけを受ける弁護士は多くありません。

キャンセル料を請求するにあたっては、弁護士が対応できない点もネックになっていました。

しかし、最近では無断キャンセル(ノーショー)が社会問題となっており、キャンセル料請求を積極的に対応する弁護士も登場しているようです。

弁護士によるキャンセル料請求のインフラが整備されつつあることからも、無断キャンセル(ノーショー)によるキャンセル料請求はしやすくなったと言えます。

4.      無断キャンセル(ノーショー)が犯罪になるケース

キャンセル料の請求はお店とお客さんの間の民事事件です。しかし、悪質な無断キャンセル(ノーショー)の事案では犯罪が成立し、刑事事件として扱われることもあります。

無断キャンセル(ノーショー)が犯罪になるかについて、テレビでは偽計業務妨害罪が成立することがあり得る旨を説明させていただきました。

4.-(1)  無断キャンセル(ノーショー)と偽計業務妨害罪

無断キャンセル(ノーショー)で犯罪が問題になる場合は偽計業務妨害罪(刑法234条)が成立するかが問題となります。

偽計業務妨害罪は、「偽計を用いて、…(人)の業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。

「偽計」とは何かは解釈の余地はありますが、業務の円滑な実施を阻害するに足りる手段・方法であれば該当する可能性があります。

例えば、キャンセル時点で来店する意思が全くなく、嫌がらせ目的で無断キャンセル(ノーショー)をすれば偽計業務妨害罪が成立すると考えられます。

もっとも現実に偽計業務妨害罪が成立するかはケースバイケースです。とくに「急用のため来店・連絡ができなかった」というようなケースでは現実に偽計業務妨害罪で有罪になる可能性は少ないと考えられます。

4.-(2)  悪質だと判断されて逮捕された事例

無断キャンセル(ノーショー)が犯罪になるのは悪質な事例に限られると思われますが、現実には逮捕者が出ているケースもあります。

例えば、2019年11月11日には、無断キャンセルした59歳男性が警視庁丸の内署に偽計業務妨害罪で逮捕されたと報道されました。

本件は、1万円のコース料理と3000円の飲み放題を17名分虚偽に予約したことが逮捕事実とされています。

(参考)無断キャンセル「No show」で59歳の男を逮捕。飲食店には死活問題、泣き寝入りせずに行動を

無断キャンセル(ノーショー)が社会問題として認識があることを背景に、悪質な事案と判断されて逮捕に至ったと考えられます。

実は、逮捕事実以外にも同一の系列店5店舗に同一の日に団体予約を入れていた事情がありました。

正規の予約ではあり得ないような事情があるときは悪質と判断されて逮捕に至る可能性があります。

4.-(3)  中華料理店への無言電話で有罪となった事例

判例データベースで検索する限り現時点では無断キャンセル(ノーショー)で有罪になった裁判例は見つかりませんでした。

もっとも、中華料理店に約3か月間で970回の無言電話をかけたことについて偽計業務妨害罪で有罪となった事案があります(東京高裁昭和48年8月7日判決)。

今後は無断キャンセル(ノーショー)の事案でも悪質なケースでは有罪判決が出されるケースも増えてくるかと思われます。

軽いいたずらだと考えて、安易に無断キャンセル(ノーショー)をすることは絶対に止めましょう。

5.      まとめ:無断キャンセル(ノーショー)が社会問題となり厳しい対応となる傾向

本件は、複数の旅館に予約を行ったものの連絡をなく予約客が現れなかった事案です。

このような無断キャンセル(ノーショー)は、近年、社会問題として注目されています。経済産業省も対策方針を策定するとともに、また、お店側もSNSで被害にあったことを情報発信するようになりました。

今まではお店が泣き寝入りをすることも多かったですが、今後は厳しい対応を行うことが増えそうです。

無断キャンセル(ノーショー)をしたときは、民事上の問題としてキャンセル料を請求されるとともに、悪質な事案では犯罪が成立して逮捕・起訴されるケースも生じるでしょう。

無断キャンセル(ノーショー)とドタキャンは違います。安易に無断キャンセル(ノーショー)をすることは絶対に止めましょう。

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