相続は「法律の問題」だけでなく、家族関係や感情が絡みやすいため、トラブルが起きやすい分野です。とくに、遺産分割の話し合いが進まない、遺言の内容に納得できない、預金の使い込みが疑われるなど、状況が複雑になると当事者だけで解決するのは難しくなります。
この記事では、相続トラブルでよくあるパターンと弁護士の解決例を整理し、「いま何が問題で、どう動けばよいか」を分かりやすくまとめます。
この記事では、次の疑問に答えます。
- 相続トラブルで多い“もめ方”にはどんな型がある?
- 弁護士に依頼すると、実際にどうやって解決へ進む?
- 遺産分割調停や遺留分など、手続きの全体像は?
- 相談前に準備しておくと良い資料は?
- 早めに弁護士へ相談した方がいいサインは?
相続は状況によって最適解が変わりますが、典型パターンを知っておくと「争点の見落とし」や「不利な合意」を避けやすくなります。
相続トラブルが起きやすい理由
相続トラブルは、次の3つが重なったときに起きやすい傾向があります。
① 感情が絡む
「親の面倒を見た」「自分だけ不公平だ」「生前に言っていた話が違う」など、法的な権利関係とは別の“納得感”が争点になります。
② 情報がそろわない
遺言書の有無、預金・不動産・借金などの全体像が見えないまま話し合いを始めると、疑心暗鬼になり、対立が深まりやすくなります。
③ 財産が分けにくい
相続財産に不動産が多い、事業や共有名義がある、評価額が割れるなど、「分け方」そのものが難しいケースはもめやすいです。
弁護士は、感情面の対立をいったん整理したうえで、証拠・資料に基づき「どこが争点で、何を優先して解決するか」を設計していきます。
相続トラブルでよくあるパターンと弁護士の解決例
パターン1:遺産分割協議がまとまらない(話が平行線)
相続人同士で連絡が取れない、要求が強硬、そもそも何が遺産か分からない――この段階で止まるケースが多いです。
弁護士の解決例:
弁護士が窓口になり、財産資料を集めて遺産の全体像(預金・不動産・有価証券・負債など)を整理します。そのうえで、法的な分割の基準(相続分、特別受益、寄与分など)を踏まえた分割案を提示し、交渉でまとまらなければ家庭裁判所の遺産分割調停を申立て、手続で解決を図ります。
パターン2:不動産が中心で「分け方が決まらない」
「実家を誰が相続するか」「売るのか残すのか」「代償金(ほかの相続人に支払うお金)は出せるのか」などが争点になりやすいです。共有名義のまま放置すると、将来の売却や管理でさらに揉めることがあります。
弁護士の解決例:
不動産の評価資料(固定資産税評価額、査定、必要に応じて鑑定など)を整え、①単独取得+代償金、②売却して現金分割、③共有(ただし管理ルールを明確化)など、現実的に実行できる選択肢を比較しながら交渉します。まとまらない場合は、調停・審判で分割方法を決めていきます。
パターン3:遺言書があるが内容に納得できない(または有効性が疑わしい)
遺言が偏っている、筆跡や作成時の判断能力に疑問がある、形式不備が疑われるなどのケースです。遺言がある場合、原則として遺言の内容が優先されるため、争い方を誤ると不利になりやすい点に注意が必要です。
弁護士の解決例:
まず、遺言の種類や保管状況を確認し、手続上必要な対応(検認が必要な遺言か等)を整理します。そのうえで、争点が「遺言の無効」なのか「遺留分」なのかを見極め、無効主張が現実的であれば証拠(医療記録、介護記録、当時の状況資料、筆跡資料など)を集めて交渉・調停・訴訟で対応します。無効が難しい場合は、次の「遺留分」の枠組みで落としどころを探ります。
パターン4:遺留分を侵害されている(取り分が極端に少ない)
「自分にはほとんど残っていない」「特定の相続人や第三者に多く渡っている」など、遺言や生前贈与で不公平が大きいと、遺留分侵害額請求が問題になります。
弁護士の解決例:
遺留分は計算が複雑になりやすいため、弁護士が財産資料や贈与の有無を調べ、侵害額の目安を算定します。請求の意思表示(通知)を行ったうえで、分割払いの交渉や担保の検討なども含め、現実的に回収できる形を整えます。合意できない場合は、法的手続で請求を進めます。
パターン5:生前贈与・特別受益でもめる(「あの人だけ得している」)
生前に住宅資金を出してもらった、学費を多く負担してもらった、事業資金の援助があったなど、「それは特別受益では?」という争いです。証拠が乏しいと感情論になりがちです。
弁護士の解決例:
贈与を裏付ける資料(振込履歴、契約書、メッセージ、領収書、当時の事情)を集め、特別受益として持戻し計算に入れるか、当事者の合意で調整するかを検討します。争点が整理できると、遺産分割調停でも主張が組み立てやすくなり、落としどころを作りやすくなります。
パターン6:寄与分でもめる(「介護や家業の貢献を反映してほしい」)
被相続人の介護を長年担った、家業を支えたなど、通常の扶養・協力の範囲を超える貢献があったと主張されるケースです。一方で、他の相続人が「それは当然のことでは?」と反発し、対立が深まることがあります。
弁護士の解決例:
介護記録、通院付き添いの記録、勤務状況、事業への関与資料などから、寄与分を主張できるかを整理します。主張できる場合は、具体的な期間・内容・負担の程度を示して交渉・調停で反映を求めます。逆に、寄与分の主張が過大な場合は、根拠の薄い部分を丁寧に切り分け、現実的な解決案に落とし込みます。
パターン7:預金の使い込みが疑われる(死亡前後の引き出し)
「亡くなる直前に多額の引き出しがある」「通帳や印鑑を管理していた人が説明しない」など、使い込み疑惑は相続トラブルの火種になりやすい典型です。
弁護士の解決例:
まず取引履歴を取り寄せ、いつ・誰が・どの口座から引き出したのかを事実として確定させます。そのうえで、生活費・医療費など正当な支出か、私的流用の疑いが強いかを精査し、返還交渉を行います。合意できない場合は、返還請求(不当利得や不法行為など、事案に応じた構成)を検討しつつ、遺産分割の中で調整するか、別手続で請求するかを戦略的に決めます。
パターン8:相続人の範囲・相続分の前提がズレている
「そもそも相続人が誰か確定していない」「認知や養子、前婚の子がいる」「戸籍を追ってみたら想定外の相続人がいた」など、前提が違うまま話し合いを進めると、後からやり直しになりやすいです。
弁護士の解決例:
戸籍を収集して相続人を確定し、法定相続分を整理したうえで協議に入ります。前提が固まると、遺産分割協議書の作り直しや、手続の無効リスク(名義変更が止まる等)を避けやすくなります。
弁護士が相続トラブルでできること
相続トラブルの解決は、「話し合いで終わらせる」のが理想ですが、状況によっては裁判所の手続を使う必要があります。弁護士に依頼すると、次のような対応を一体で進められます。
- 相続人・遺産の調査:戸籍収集、財産資料の整理、銀行・不動産などの情報確認
- 窓口(代理交渉):相手方との連絡・交渉を弁護士が担い、感情的対立を抑えながら進行
- 分割案の設計:相続分、特別受益、寄与分、遺留分などを踏まえた現実的な落としどころ作り
- 裁判所手続の対応:遺産分割調停・審判、遺留分侵害額請求など、状況に応じて手続選択
- 合意書・書面化:後から蒸し返されにくい形で協議内容を整理し、実行までつなげる
相続では、最初の整理(相続人・遺産・争点)が曖昧なまま進むと、後で「やり直し」になりがちです。早い段階で弁護士に整理してもらうだけでも、解決が現実的になります。
相談前に準備するとスムーズな資料
すべて揃っていなくても相談は可能ですが、次の資料があると「見通し」や「争点」が早く固まります。
- 被相続人の情報(氏名・生年月日・死亡日・本籍など分かる範囲)
- 遺言書の有無・内容(手元にある場合は写しや写真でも可)
- 相続人関係が分かる資料(戸籍が未収集でも、家族関係のメモでOK)
- 財産の資料(通帳、残高、保険、証券、不動産の資料、借金の請求書など)
- これまでの経緯(いつ・誰が・何を言ったかの時系列メモ)
ポイント:「相手の主張」と「自分の希望」を分けてメモしておくと、相談が短時間でも整理しやすくなります。
早めに弁護士へ相談した方がいいサイン
次のような事情がある場合、当事者だけで進めるより、早めに専門家を入れた方が結果的に早く・安全に解決しやすいです。
- 相手が強硬で連絡が取れない、話し合いが進まない
- 不動産が中心で、分け方や評価で揉めている
- 遺言が偏っている/有効性に疑問がある
- 預金の使い込みが疑われ、説明が得られない
- 遺留分の問題がありそうで、計算や請求の進め方が分からない
相続は「こじれてから」よりも、「こじれそうな段階」で動いた方が、選択肢が広く、交渉も柔軟に進みやすい傾向があります。
まとめ
相続トラブルは、典型パターンを押さえて争点を整理するだけでも、解決の見通しが立ちやすくなります。
- 相続は感情・情報不足・分けにくい財産が重なると揉めやすい
- 典型は「遺産分割が平行線」「不動産」「遺言」「遺留分」「特別受益」「寄与分」「使い込み」など
- 弁護士は調査→交渉→必要なら調停・審判・請求手続まで一体で進められる
- 相談前は、遺言・財産資料・時系列メモがあると整理が早い
- 強硬な相手、不動産、使い込み、遺留分が絡むなら早めの相談が有効
相続は「何が争点か」が見えた時点で、打ち手がはっきりします。話し合いが進まない場合や、資料の整理から不安がある場合は、早めに弁護士へ相談して状況を整理することをおすすめします。





