「弁護士に初回相談したいけれど、何を話せばいい?」「電話相談と面談は何が違う?」「匿名で聞けないの?」――こうした疑問はとても自然です。
初回相談は、相談者が弁護士を見極める場であると同時に、弁護士も相談者・事件を見極める場でもあります。準備の仕方を少し工夫するだけで、得られる情報量と納得感が大きく変わります。
- 電話相談・オンライン相談・面談(来所)の違いと、向く相談内容
- 匿名相談ができない理由(利益相反チェック等)と、守秘義務の考え方
- 弁護士が相談・依頼を断ることがある理由と、避けたいコミュニケーション
- A4一枚で十分な「事実整理メモ」の作り方(資料は増やしすぎない)
- 初回相談の流れ(例)と、聞くべき質問・次の一手
弁護士の「初回相談」で決めるべき3つのこと
初回相談のゴールは、細かい法律論を全部聞くことではありません。多くの場合、次の3点が整理できれば合格です。
① いま何が問題で、どこが争点か/② 取りうる選択肢と見通し(リスク込み)/③ 依頼するなら何から進めるか(費用感・手続き)。
逆に言えば、ここが整理できないまま時間だけが過ぎると「相談したのにモヤモヤした」で終わりがちです。準備は、そのモヤモヤを減らすために行います。
電話相談・オンライン相談・面談(来所)の違い
電話相談:まずは「相談に乗れるか」の一次判断が中心
電話相談は、移動が不要でハードルが低い一方、資料を一緒に見ながら細部を詰めるのが難しいという限界があります。そのため、初回の電話相談は次のような用途に向きます。
- 緊急性の確認(期限・通知・裁判手続の有無など)
- 大枠の見立て(何が論点になりそうか/何が不足情報か)
- 面談に進む場合の「持ってくるべき情報・資料」の整理
電話相談でいきなり「勝てますか?」「いくら取れますか?」だけを求めると、正確な回答は出にくくなります。電話では事実の骨組み(いつ・誰が・何を・どうした)を短く伝えるのがコツです。
オンライン相談:距離の壁は下がるが、環境と情報共有が鍵
オンライン(ビデオ通話等)は、遠方でも話せる利点があります。反面、通信環境や周囲のプライバシー(同席者の有無)によって話しづらさが出ることがあります。共有したい資料があるときは、「何を」「どの順で」説明するかを相談者側で整理しておくと進行がスムーズです。
面談(来所):深掘りと「方針決定」に向く
面談は、弁護士が表情や反応も含めて状況を把握しやすく、資料確認もしやすいので、具体的な方針決定に向きます。たとえば次のようなケースは面談の価値が上がります。
- 資料が多い(契約書、LINE、メール、通知書、裁判書類など)
- 複数の出来事が絡む(時系列が長い/当事者が多い)
- 落としどころ(和解・条件・金額)の優先順位を整理したい
匿名で相談できない理由:利益相反チェックと最低限の本人確認
「身バレが怖いので匿名で…」というお気持ちは分かりますが、弁護士は利益相反(依頼者同士の利害対立)の問題がある事件を受けられない場合があります。
そのため、初回相談でも、少なくとも相談者の氏名、相手方がいる場合は相手方の氏名(会社名)などを確認する必要が出てきます。また、弁護士は、長期的な信頼関係を築くことがでない人からの依頼を受けることは出来ません。「自己紹介をする」という人として当然のことすら出来ない人からの相談は受けないというのは当然の感覚でもあります。
また、弁護士には守秘義務があり、職務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らしたり利用したりしてはならないとされています。安心して事実を共有するためにも、「誰が誰に話しているのか」が明確であることは重要です。
「匿名でなければ怖い」という場合は、まずは相談の目的(何を確認したいか)を短くまとめ、相談先に「どの範囲の情報開示が必要か」を確認して進めるのが現実的です。
弁護士は相談・依頼を断ることがある:相談者も、弁護士も“選ぶ”
初回相談の場は、相談者が「この弁護士に任せられるか」を判断する場です。それと同じくらい、弁護士側も「この事件を適切に扱えるか」「信頼関係を築けるか」を判断しています。
弁護士には、受任後に利益相反が判明しないよう確認する義務的配慮があり、そもそも利益相反などで職務を行えない類型も定められています。さらに、事件の性質、専門性、時間的制約、依頼者との相性などにより、受任を控える判断がなされることもあります。
「断られた=あなたが悪い」ではない
受任を断られる理由は多様です。例えば、利益相反の可能性、専門外、スケジュール上の制約、情報が不足していて現時点で判断できない、など。
大切なのは、断られたときに感情的にならず、「次に何を整えれば別の弁護士に相談しやすいか」を切り替えることです。
SNSで見かける「相談者NG」には、現場の事情がある
X(旧Twitter)などで、匿名の弁護士が「受けたくない相談」の話題を発信しているのを見かけることがあります。刺激的に見えることもありますが、背景には限られた時間で正確に判断する必要や、後戻りできないリスクを避けたいという実務上の事情があります。
つまり、初回相談は“お願いする場”というより、共同作業のスタート地点です。弁護士にとっても、きちんと情報が出てくる相談は、対応しやすく、良い結果にもつながりやすい傾向があります。
初回相談の準備:資料は「増やす」より「絞る」
初回相談で最も多い失敗は、資料を大量に持ち込み、重要点が埋もれてしまうことです。弁護士が最初に目を通せるメモは、現実にはA4一枚程度だと思って作るのがおすすめです。
A4一枚メモのテンプレ(コピペして使える形)
次の項目を、箇条書きで短く埋めてください。これだけで相談の質が上がります。
- 当事者:あなた/相手(氏名・会社名)/関係者
- いまの状況:何が起きているか(通知、請求、交渉、手続の有無)
- 時系列(5〜10行):いつ、何があったか(重要イベントだけ)
- 証拠の所在:契約書、メール、LINE、録音、振込記録など(ある・ない)
- あなたの希望:①最優先(例:早期解決)②譲れる点 ③譲れない点
- 期限・制約:回答期限、裁判期日、転居予定、家族に知られたくない等
資料を持参する場合も、「全部」ではなく、争点に直結するものを数点に絞るのが基本です。大量の資料は“安心材料”になりがちですが、初回は整理が追いつかず逆効果になることがあります。
「言いたいこと」より「確認したいこと」を先に決める
悩みが深いほど、背景から話したくなるものです。ただ、相談時間は有限です。初回相談では、まず確認したい結論を3つ程度に絞ると、話が散らかりません。
例:①いま連絡してよいか/しない方がよいか、②請求金額は妥当か、③今週中にやるべきことは何か。
初回相談の流れ(例):当日はこう進むことが多い
事務所や案件により違いはありますが、初回相談は次のような流れで進むことが一般的です。
- 自己紹介・アイスブレイク(緊張をほどく、相談のゴール確認)
- 基本情報の確認(当事者関係、相手方、経緯の概略)
- 相談概要のヒアリング(何が起きたか、争点はどこか)
- 相談者のニーズ・不安の確認(何が一番困っているか)
- 追加ヒアリング(ニーズに直結する論点を深掘り)
- 資料の確認(必要な範囲で、要点中心に)
- 対応方針・見通しの説明(リスク、分岐、優先順位)
- 依頼する場合の手続案内(委任契約、次の行動、費用の説明・見積もり)
ここでのポイントは、「結論→理由→補足(例外・注意点)」の順で整理してもらえる弁護士ほど、相談者も判断しやすいという点です。相談者側も、A4メモで“結論に必要な情報”を提供できると、説明が具体的になります。
初回相談で聞くと得する質問リスト
「何を聞けばいいか分からない」場合は、次の質問を状況に合わせて使ってください。
- いま最優先でやるべきこと/やってはいけないことは何ですか?
- 争点(勝ち負けが動くポイント)はどこですか?
- こちらに不足している情報・証拠は何ですか?集め方は?
- 交渉で解決する場合と裁判等に進む場合で、見通しはどう変わりますか?
- 期間の目安はどれくらいですか?(分岐があれば分けて)
- 依頼するなら、費用はどういう体系で、どの段階で発生しますか?
なお、弁護士は結果を保証できません。見通しは「前提(事実・証拠)」によって変わるので、“断定”より“条件付きの説明”をしてくれる弁護士の方が、むしろ誠実です。
相談後の動き:その場で決めなくていいが、放置もしない
初回相談のあと、すぐに依頼を決める必要はありません。ただし、期限がある案件では放置が最悪です。相談後は次のどれかに進むのが基本です。
(A)依頼する:委任契約の手続へ。必要資料・次のアクションが明確になります。
(B)追加情報を集めて再相談する:不足証拠・時系列を整えると、見通しが具体化します。
(C)別の弁護士にも相談する:相性や専門性の確認(いわゆるセカンドオピニオン)です。特に金額が大きい、人生への影響が大きい案件では合理的です。
当事務所へのご相談(電話相談・面談の流れ)
当事務所では、ご相談内容に応じて、まずはお電話やお問合せフォームで概要をうかがい、必要に応じて面談のご案内をします。相談の入口や費用の考え方は、下記ページもあわせてご覧ください。
まとめ
- 初回相談は「相談者が選ぶ」だけでなく「弁護士も受任可否を判断する」場でもある
- 電話相談は一次判断、面談は深掘りと方針決定に向く――目的に合わせて使い分ける
- 匿名での相談が難しいのは、利益相反チェック等の理由があるため
- 準備は資料を増やすより、A4一枚で「当事者・時系列・希望・期限」を整理するのが効果的
- 相談後は、依頼/追加準備/セカンドオピニオンのいずれかに進み、期限があるものは放置しない
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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な見通しや対応は、事実関係・証拠・相手方の対応等により大きく変わります。





