相続対策(贈与を用いた方法)

相続対策(贈与を用いた方法)

相続税対策の方法として贈与を用いる方法があります。

贈与を行うと贈与税がかかりますが、一般的には贈与税の税率は相続税の税率を上回るケースが多いです。

 

しかし、贈与税は1年間で110万年以下の贈与に関しては非課税となるため毎年贈与を行う方法があります(「暦年贈与」といいます。)。

また、配偶者に対する贈与税の優遇制度を利用する方法等も考えられます。

執筆者:弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

  • 2009年 京都大学法学部卒業
  • 20011年 京都大学法科大学院修了
  • 2011年 司法試験合格
  • 2012年 森・濱田松本法律事務所入所
  • 2016年 アイシア法律事務所設立

01 暦年贈与について

 

贈与税は毎年110万円以下の贈与については課税されません。また、この判定は贈与を受ける者毎に行われます。

例えば、子どもが2人、孫が4人いる場合、110万円×6人で毎年660万円を贈与すれば課税されずに相続財産を減らすことができます。

 

ただし、暦年贈与を行うに当たってはいくつか注意点があります。

 

①     定期金の贈与契約と判断されるリスク

110万円以下の贈与を毎年同じ時期に行っていた場合、毎年定期金を贈与する定期金の贈与契約がなされたと判断される可能性があり、この場合は多額の贈与税が課されてしまいます。

例えば、100万円を10年間贈与した場合、最初の年に1000万円を贈与する契約を行ったと判断されてしまうのです。

このようなことを防ぐためには、例えば、毎年贈与契約書を作成する等の工夫が必要となります。

 

②      名義預金と判断されるリスク

贈与を受ける方が子どもであり未成年等の理由から、贈与した現金の入金口座を子どもの親が管理してしまうと、実質的には当該預金口座は親の口座であり贈与が行われていないと判断される場合があります。

 

このようなことを防ぐためには、贈与した金員の入金口座をきちんと子どもが管理するようにする必要があります。他方で、多額のお金を与えることが不安である場合には例えば生命保険を活用して、贈与した金員を保険金の支払いに充てることで子どもが自由にお金を使えなくする等の工夫が必要となります。

 

③     その他の贈与と認定されるための工夫

税務署が贈与の事実を認定しなければ、贈与がなかったものとして取り扱われるため有効な相続税対策とはなりません。そこで、税務署に贈与を認定して貰うためには以下のような工夫を行う必要があります。

  • 契約書を作成する
  • 贈与した金員の移動を通帳等に記録しておく
  • 贈与を受けた側が預金通帳や印鑑を管理する
  • 贈与税の申告を行う

 

このうち、贈与税の申告を行う方法は、あえて毎年110万円の基礎控除を超える贈与を行うことによって、贈与税を申告する方法です。例えば、毎年120万円の贈与を行って10万円に係る贈与税を申告しておけば、税務署としては一旦贈与を認定して贈与税の納税を受けているため後に否認しにくいという方法です。

 

02 配偶者に対する自宅の贈与(おしどり贈与)

 

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、自宅(居住用不動産)の贈与が行われた場合、最高2,000万円まで控除ができます(配偶者控除)。この方法は、相続税対策としてかなり有効に使えます。

 

03 生活費・教育費の贈与

 

扶養義務者間相互において生活費・教育費を贈与した場合は、当該贈与が通常必要と認められるのであれば贈与税の課税対象とはされません(国税庁HP: http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/sozoku/131206/pdf/01.pdf)。

 

そのため、例えば、祖父母から孫に対して教育資金や留学資金を贈与して貰う方法が考えられます。援助を受けることによってお孫さんは良い教育を受けることができますし、相続税対策にもなるため有効に活用して下さい。

 

なお、これは通常の範囲内の贈与であれば良く、平成25年度税制改正によって導入された、1,500万円を上限として孫に対する教育資金の贈与が非課税となる制度(国税庁HP:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4510.htm)とは別のものとなります。