相続人とは

相続人とは

相続人とは、亡くなった人(「被相続人」といいます。)の遺産・相続財産を受け継ぐ人のことです。どの範囲で相続人となり(「法定相続人」といいます。)、どのような割合で相続できるか(「法定相続分」といいます。)は色んなパターンによって変わりますので注意が必要です。

執筆者:弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

  • 2009年 京都大学法学部卒業
  • 20011年 京都大学法科大学院修了
  • 2011年 司法試験合格
  • 2012年 森・濱田松本法律事務所入所
  • 2016年 アイシア法律事務所設立

配偶者(常に相続人となります。)

 

被相続人の配偶者は必ず相続人となることが出来ます(民法890条)。
配偶者以外に相続人となれる親族がいる場合にはその親族とともに法定相続人となりますし、そのような親族がいない場合には単独で法定相続人となります。

 

なお、離婚した場合のように過去に配偶者であっただけでは相続人にはなれませんので注意が必要です(両親が離婚しても子どもは相続人になれることと異なります。)。

 

配偶者が他の親族とともに法定相続人となる場合の相続分は以下のとおりです。他の相続人が複数いる場合は相続分の割合はその相続人たちで等分となります。例えば、子どもが3名いるときは、子どもの相続分1/2を3名で等分するため1人あたり1/6となります。

他の親族との関係 相続分の割合
配偶者と子どもが相続人の場合 配偶者1/2、子ども1/2
配偶者と親が相続人の場合 配偶者2/3、直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

 

その他の親族

 

配偶者以外に法定相続人となれる親族は以下のとおりです。

 

①子ども(第1順位)

被相続人に子どもがいる場合には、子どもが相続人となります。子どもには、胎児、養子、非嫡出子も含まれます。ただし、非嫡出子の場合は父親に認知されなければ相続人とはなりません。

仮に両親が離婚している場合でも、子どもであることには変わらないので法定相続人となります。例えば、死亡した男性の前妻との間に子どもが居て、後妻(現在の妻)との間に子どもが居ない場合は、前妻との間の子どもと後妻は相続人となりますが、前妻は相続人とはなりません。

 

なお、子どもが被相続人よりも先に死亡している場合には、子の子や孫(直系卑属)が相続人となります(代襲相続人、民法887条2項)。稀なケースですが、死亡した子どもの子ども(被相続人からみて孫)を養子にした場合、その孫は養子であるため子どもとしての相続権と、代償相続人としての双方の相続分を取得することができます(昭和26年9月18日民事甲1881号民事局長電報回答参照)。

 

子どもが複数いる場合には、原則として子ども間の相続分は均等となります。昔は非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の半分とする旨が民法900条4号但書前段によって定められていましたが、最高裁大法廷平成25年9月4日決定が当該規定を違憲と判断したことを受けて当該規定は削除されました。

 

②父母(第2順位)

 

被相続人に子どもや孫がいない場合には、被相続人の父母(直系尊属)が第2順位の相続人となります。

 

なお、直系尊属の間では、「親等の近い者」が相続人となります。例えば、父母がいる場合は父母の親等は同じであるため両方が相続人となりますが、父母と祖父母がいる場合には父母のみが相続人となります。

 

③兄弟姉妹(第3順位)

 

被相続人に子ども(直系卑属)や父母(直系尊属がいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が第3順位の相続人となります。

 

兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡している場合には、兄弟姉妹の子ども(被相続人の甥姪)が代襲相続人となります(民法889条2項)。

 

まとめ

 

以上のとおり、配偶者は常に相続人となりますが、父母(直系尊属)と兄弟姉妹は前順位の相続人がいない場合にのみ相続人となります。子どもが居ない場合にのみ父母が相続人となりますし、子どもや父母がいない場合のみ兄弟姉妹が相続人となります。

 

子どもや兄弟姉妹が相続人となる場合に、子どもや兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡しているときは、その子ども(孫や甥姪)が相続権を引き継いで相続人となります(代襲相続)。