相続人になれない者とは

相続人になれない者とは

相続人であったとしても必ず遺産(相続財産)を取得できるとは限りません。例えば、遺言書を偽造したり隠した場合は相続人となる資格を失いますし(相続欠格)、被相続人が侮辱等を行った相続人について申立てによって相続資格を失わせることもできます(相続人の排除)。

相続人となれない者は以下のとおりです。

執筆者:弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

  • 2009年 京都大学法学部卒業
  • 20011年 京都大学法科大学院修了
  • 2011年 司法試験合格
  • 2012年 森・濱田松本法律事務所入所
  • 2016年 アイシア法律事務所設立

01 法定相続人に該当しない者

 

そもそも法定相続人に該当しない場合は相続人となることは出来ません。

とくに質問が多いのは以下のような場合ですが、いずれも原則として相続人となれないと考えられます。

  • 内縁(事実婚)の妻や愛人
  • 認知されていない愛人の子ども
  • 配偶者の連れ子

 

従って、これらの場合に相続財産を取得させたいのであれば、例えば遺言や養子にする又は認知を行う等によって対応する必要があります。

 

02 相続欠格者

 

一定の事由がある場合には、被相続人の申立てや家庭裁判所の決定がない場合でも、相相続資格を失う場合があります(相続欠格者、民法891条)。

但し、相続欠格者の子どもが代襲相続を行うことはできます(民法887条2項)。

 

相続欠格となる事由には以下のとおりのものが存在します。まとめると、相続に有利になるように殺人・殺人未遂を行った者や、遺言書に対して不当な関与を行った者が相続欠格者とされます。

 

①被相続人を殺害又は殺害未遂しようとして刑罰に処せられた場合

但し、過失致死罪や傷害致死罪は含まれません。

 

②被相続人が殺害されたことを黙っている場合

被相続人が殺害されたことを知っているのに、告訴・告発しなかった場合にも欠格事由となります。

 

③詐欺・強迫による遺言書の変更等

 

被相続人に対して詐欺を行ったり、脅したりして、遺言書を書かせたり又は遺言書を変更させたような場合には欠格事由となります。

 

④遺言書の破棄等

 

遺言書を破棄したり隠したりした場合や偽造・変造した場合には欠格事由となります。

 

相続の廃除

 

相続欠格事由程の重大な事由が存在しない場合でも、一定の事由があるときに被相続人の請求によって、遺留分のある相続人の相続資格を喪失させる制度があります(推定相続人の廃除、民法892条)。

なお、廃除の場合でも廃除された相続人の子どもには代襲相続を行うことが可能です(民法887条2項)。

 

廃除事由は、被相続人に対して虐待をした又は重大な侮辱を加える等の著しい非行があることです。著しい非行の例としては、無職であるのにギャンブルで浪費をしている例等があります。

 

廃除事由があると考える場合は、家庭裁判所に対して当該相続人の廃除を請求し、家庭裁判所が廃除事由の有無を判断します。

また、遺言において推定相続人の廃除の意思表示を行うことも可能です(民法893条)。この場合は、遺言の効力が生じた後に遺言執行者が家庭裁判所に対して相続人の廃除を請求します。例えば、廃除の対象となる相続人が、被相続人が廃除の請求を行ったことを知ると、更なる暴力を加えるようなことが想定される場合は、遺言による廃除を選択するのが効果的だと思われます。