M&Aのあとになって簿外債務や粉飾・法令違反・大型クレームが見つかり、「これは表明保証違反なのか」「どこまで損害賠償・補償請求できるのか」で悩む場面は珍しくありません。
本カテゴリでは、中小企業オーナー、上場子会社・スタートアップの経営陣、法務・管理部門、会計士・税理士などM&A実務に関わる方に向けて、表明保証条項の基礎から、DD不足・情報開示・簿外債務発覚時の対応までを一通りたどれる記事群をまとめています。


M&A表明保証トラブルの全体像と「読む順番」

この分野を一通り押さえるためのおすすめの流れは、次のイメージです。

  1. **「そもそも表明保証とは何か」**を
    → 『M&Aにおける表明保証条項とは何か【買い手・売り手の基本リスク】

  2. **「なぜ表明保証違反・簿外債務がこれほど大きなM&Aトラブルになるのか」**を
    → 『表明保証違反・簿外債務トラブルの全体像と基本対応(総論)

  3. DD不足・情報開示義務違反と表明保証の関係
    → 『デューデリジェンス不足・情報開示義務違反と表明保証の関係

  4. 実際にトラブルが起きたときの**「チェックポイントと初動対応」**を
    → 『表明保証違反が疑われるときのチェックポイントと初動対応

  5. 特に重いテーマである**「簿外債務・粉飾・不正会計が買収後に判明した場合の対応」**を
    → 『簿外債務・粉飾・不正会計が買収後に発覚したときの法的対応
    そのうえで、さらに踏み込んで、

  • 表明保証違反と損害賠償額・責任制限条項の関係

  • 補償条項(インデムニティ)による責任追及の枠組み

  • キャップ・バスケット・サバイバル期間など責任制限条項の設計

を知りたい場合は、後述の「契約設計編」の各記事を読む、という順番を想定しています。


主要5本の記事ごとの役割と違い

M&Aにおける表明保証条項とは何か【買い手・売り手の基本リスク】
https://corporate-a-lawoffice.com/ma-hyoumeihosho-basics/)
M&A契約のひな形に必ず出てくる表明保証条項について、

  • どのような事実を「真実かつ正確」と約束しているのか

  • 権利関係・財務・簿外債務・許認可・労務・知財など典型項目は何か

  • 買い手・売り手それぞれにとってどのような基本リスク・交渉ポイントがあるか
    を整理した入口記事です。DDや補償条項との「三層構造」のイメージをつかむ前提になります。

表明保証違反・簿外債務トラブルの全体像と基本対応(総論)
https://corporate-a-lawoffice.com/ma-hyoumeihoshoihan-matome/)
M&A後に簿外債務・粉飾・法令違反などが見つかったとき、

  • どのような表明保証違反・簿外債務トラブルが典型か

  • 「高値で買わされた」「想定外コストが発生した」といった紛争がなぜ起きるのか

  • 買主・売主の双方にとって、どのような予防策(DD・契約設計・R&W保険等)があり得るか
    を俯瞰的にまとめた総論記事です。個別の論点に入る前に、「どこまで行くと重大紛争になるのか」という感覚が掴みやすくなります。

デューデリジェンス不足・情報開示義務違反と表明保証の関係
https://corporate-a-lawoffice.com/ma-hyoumeihosho-dd-disclosuretrouble/)
DD不足と売主の情報開示義務違反が、表明保証とどう絡むのかを、

  • DDの目的と限界(期間・コスト・資料の質・協力度の制約)

  • 情報開示義務違反・情報隠ぺいと評価されやすい典型パターン

  • アルコ事件などの裁判例を踏まえた、DD不足・開示状況・表明保証責任の関係

  • 買主・売主それぞれの予防策・チェックポイント
    という切り口で整理する記事です。「DDが甘かった=直ちに買主の負け」「DDさせた=全て買主の自己責任」といった極端な理解を修正するのに役立ちます。

表明保証違反が疑われるときのチェックポイントと初動対応
https://corporate-a-lawoffice.com/ma-hyoumeihosho-breachcheckpoints/)
実際にM&A後の簿外債務・粉飾・法令違反・大型クレームが見つかり、
「これは表明保証違反ではないか?」と感じたときに、

  • 表明保証違反の「疑い」が生じる典型パターンと裁判例ベースの事例イメージ

  • 事実・契約・損害・期限という4つの観点からの共通チェックポイント

  • 買主側の初動対応(証拠収集・契約確認・損害の仮試算・通知)

  • 売主側の初動対応(事実・開示状況の棚卸し、買主の重過失有無の整理)
    を具体的に示す記事です。**「まず何を確認し、どの順番で動くべきか」**という実務フローにフォーカスしています。

簿外債務・粉飾・不正会計が買収後に発覚したときの法的対応
https://corporate-a-lawoffice.com/ma-hyoumeihosho-balance-sheet-liabilities/)
「M&Aが終わったあとに簿外債務や不正会計が見つかった」という、最も重い類型に特化した記事で、

  • 簿外債務・粉飾・不正会計がなぜM&A後の重大トラブルになるのか

  • 買収後に発覚する典型パターン(決算・監査、税務調査、内部通報、PMI等)

  • 買主側の初動対応フローと、取れる法的手段(表明保証違反・債務不履行・取消・旧経営陣への責任追及など)の整理

  • 売主側・旧経営陣のガバナンス対応と、将来のトラブルを防ぐためのDD・契約・モニタリングのポイント
    を扱っています。単なる「簿外債務の有無」にとどまらず、銀行・従業員・当局対応まで含めた影響を意識した内容になっている点が特徴です。


よくある誤解・注意点と「契約設計編」の記事

表明保証違反・簿外債務トラブルをめぐっては、

  • 「表明保証があるから、損害は全部売主に請求できるはず」

  • 「DCF評価が下がった=そのまま損害として認められる」

  • 「キャップやバスケットを付けておけば、売主はほぼ守られる」

といった誤解が、実務の現場ではしばしば見られます。実際には、

  • 損害として認められやすいのは、純資産の減少分や是正工事費用など、客観的に把握しやすい項目に限られることが多い

  • 補償条項(インデムニティ)の書きぶりや、キャップ・バスケット・サバイバル期間の設計次第で、請求し得る額・期間が大きく変わる

  • 故意・重過失や第三者・当局対応、レピュテーションリスクまでは、条項だけで切り捨てられない

といった「契約の限界」も存在します。

こうした**「いくら・どこまで請求し得るのか」「補償条項・責任制限条項をどう設計するか」**を深掘りしたのが、次の3本です。

本カテゴリ全体としては、**「どこまでが契約設計や交渉でコントロールできるリスクで、どこから先はDD・ガバナンス・経営判断の問題になるのか」**という境界線を意識できるように構成しています。
詳しくは、上記の各解説記事を、読者の立場(買主側/売主側)や現在のフェーズ(検討中/交渉中/トラブル発生後)に応じて読み進めてみてください。