風評被害は弁護士に相談すべき?削除・開示・賠償の進め方と注意点

SNSや口コミサイト、掲示板などで根拠のない噂や誤解を招く情報が広まり、売上や採用、取引、日常生活にまで影響が出ることがあります。こうした「風評被害」は、対応が遅れるほど拡散しやすく、投稿が削除されると証拠やログ(アクセス記録)が追えなくなるなど、後から取り返しがつかない局面もあります。

この記事では、風評被害を受けたときに弁護士へ相談すべき場面と、削除・投稿者特定・損害回復までの実務的な流れを整理します。企業・店舗のケースはもちろん、個人が被害に遭った場合にも共通する考え方です。

  • 風評被害とは何か(誹謗中傷・名誉毀損との違い)
  • 違法になり得るポイント(民事・刑事の整理)
  • 削除までの現実的な手順(任意削除/削除仮処分)
  • 投稿者を特定する手続(発信者情報開示)とタイムリミット
  • 弁護士に依頼するメリットと、相談前に準備したい資料

風評被害とは

一般に風評被害とは、事実に反する情報、誇張された情報、文脈を切り取った誤解を招く情報などが広まり、社会的評価(信用)や営業、生活に悪影響が生じることを指します。インターネット上では拡散が早く、検索結果に残り続けることもあるため、被害が長期化しやすい点が特徴です。

ただし、すべての「悪い評判」が直ちに違法になるわけではありません。たとえば「味が好みではなかった」「接客が合わなかった」といった主観的評価は、原則として表現の自由の範囲として扱われやすい一方、具体的な事実を挙げて社会的評価を下げる内容(例:犯罪行為の断定、衛生面の虚偽、取引先や個人情報の暴露など)は、違法と評価される可能性が高まります。

風評被害が起きやすい媒体と典型例

風評被害は、媒体ごとに「消え方」「拡散の仕方」「必要な証拠」が異なります。代表例は次のとおりです。

  • SNS(投稿・引用・リポスト):短時間で拡散し、炎上すると第三者の憶測が連鎖しやすい
  • 口コミサイト・地図サービスのレビュー:検索導線に直結し、来店・予約・採用に影響が出やすい
  • 匿名掲示板・まとめサイト:スレッドが長期保存され、転載で被害が増幅しやすい
  • 動画サイト・配信:切り抜きや二次拡散で文脈が変わりやすい
  • 検索結果・サジェスト:投稿自体が消えても、検索周りにネガティブワードが残る場合がある

どこに何が投稿されたか(URL・投稿ID・日時・アカウント)を押さえ、媒体の仕組みに合わせた手段を選ぶことが重要です。

風評被害が違法になる判断枠組み

風評被害への対応では、「不快」「困る」という感覚だけでなく、法的にどの権利侵害に当たるかを整理します。主に、民事(削除・賠償)と刑事(犯罪)で見立てが必要です。

民事上問題になりやすい権利侵害

代表的なのは、名誉(社会的評価)や信用、プライバシーの侵害です。内容・文脈・拡散状況によって判断されます。

  • 名誉毀損(民事):具体的事実の指摘により社会的評価を下げる場合(真実でも違法になり得ます)
  • 侮辱・人格権侵害:根拠なく人格を貶める表現(蔑称、差別的表現など)
  • プライバシー侵害:住所・勤務先・顔写真・家族構成など私生活情報の暴露
  • 営業権・信用の侵害:虚偽の情報で取引や来店を妨げる類型

「事実を書いただけだから問題ない」と言われることがありますが、表現の方法や公益性・必要性、真実性など複数要素で評価されるため、個別に検討が必要です。

刑事上問題になり得る犯罪

悪質な風評被害では、刑事事件としての対応を検討することもあります。代表例として、名誉毀損罪・侮辱罪のほか、虚偽の噂の流布等による信用毀損・業務妨害(いわゆる「風説の流布」)が問題になることがあります。

もっとも、刑事手続は、証拠の状況や内容の悪質性などによって見通しが変わります。「どの罪名が現実的か」「民事と並行すべきか」は、早い段階で整理するのが安全です。

最初にやるべきこと:証拠を消さない(スクショ+特定情報)

風評被害の対応では、削除・開示・賠償・刑事のいずれを選ぶにしても、最初に証拠の確保が不可欠です。投稿は削除・非公開化されることがあり、ログ(投稿者特定の手掛かり)も一定期間で消える可能性があります。

最低限残したい証拠

  • 投稿のスクリーンショット(投稿内容・投稿者情報・日時が分かる形)
  • 投稿URL(パーマリンク)/投稿ID/スレッド番号
  • 閲覧・保存した日時(いつ気付いたか)
  • 拡散状況(引用・リポスト、まとめ転載、検索結果の表示など)

スクリーンショットはトリミングや加工を避け、原本を残してください。必要があれば、PDF保存(印刷機能)など複数形態で残しておくと安全です。

削除までの進め方:任意削除→法的手続の順に検討する

削除は「速さ」と「確実性」のバランスが重要です。一般には、まず運営者の任意対応(通報・ガイドライン申請)を試し、難しければ弁護士名での通知、さらに裁判所手続へ進むという流れになります。

1. 運営者の窓口(通報・ガイドライン)で削除を求める

多くのサービスは、専用フォームやガイドライン違反の申請窓口を用意しています。ここで削除されるケースもありますが、表現の自由との関係で「違反が明確でない」と判断されると削除されないことがあります。

2. 弁護士名での削除要請(内容証明等)

任意対応が難しいときは、投稿の違法性(どの権利侵害か)を整理した上で、運営者に対して削除要請を行います。主張と証拠を整えて「どの投稿を、どの理由で、いつまでに」求めるかを明確にすることがポイントです。

3. 裁判所手続:削除仮処分(緊急性が高い場合)

被害が拡大している、検索結果に露出し続けている、取引や採用に直撃しているなど、緊急性が高い場面では、裁判所の手続で削除を求める削除仮処分を検討します。通常訴訟よりも早期の解決を目指す仕組みですが、権利侵害の見込みと、今すぐ削除が必要な事情の説明が重要です。

また、仮処分が認められる場合には担保金が必要になることがあります。費用・期間は事案により大きく変動するため、早めに見通しを確認することが大切です。

投稿者を特定したい場合:発信者情報開示と「ログの期限」

削除だけでは再投稿を防げない、損害賠償を求めたい、悪質な相手に警告したいといった場合は、投稿者の特定(発信者情報開示)を検討します。匿名投稿でも、手続を踏めば特定できる可能性があります。

発信者情報開示で問題になるポイント

  • 対象投稿の特定:URLや投稿日時など、ログと結び付けられる情報が必要
  • 開示の見込み:権利侵害が明確であるほど進めやすい
  • タイムリミット:ログは永久に保存されないため、対応が遅れると特定が難しくなる

削除を先に進めると、後から「対象投稿が特定できない」「ログと結び付けられない」状態になることがあります。削除・開示・賠償の優先順位は、被害の性質とゴール(沈静化か、責任追及か)で決める必要があります。

発信者情報開示の概要は、下記ページでも解説しています。

発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求の流れと手続き

損害賠償請求で回復できる可能性のある損害

投稿者を特定できた場合や、特定前でも一定の相手方が想定できる場合には、損害賠償請求を検討します。請求できる範囲は事案により異なりますが、典型的には次のような損害が問題になります。

慰謝料:名誉・信用の侵害による精神的損害

営業損害:売上減少、予約キャンセル、取引停止など(立証が重要)

対応費用:調査・説明対応・一定の対策費用など(相当因果関係が争点になりやすい)

「どの期間で、何がどれだけ減ったか」「投稿との因果関係がどこまで言えるか」を示す資料(売上推移、キャンセル記録、取引先からの連絡等)を早期に整理しておくと、交渉・裁判での説得力が高まります。

企業・店舗が風評被害に遭ったときの実務ポイント

企業や店舗の場合、法的対応と同時に「社内外のコミュニケーション」を誤ると被害が拡大します。次の点を意識してください。

  • 事実確認と窓口の一本化:現場判断でバラバラに反論すると矛盾が生まれやすい
  • 反撃投稿のリスク管理:感情的な応酬は火に油になりやすい
  • 顧客・取引先への説明:必要な範囲で、落ち着いた事実説明を準備する
  • 再発防止:同種投稿の監視、誤情報の訂正導線づくり(公式発信等)

また、いわゆる「風評被害対策業者」へ依頼する場面では、違法・不適切な手段(他者を陥れる投稿、なりすまし等)に当たらないよう注意が必要です。削除・開示・交渉など法的手続を伴う部分は、弁護士が対応できる領域です。

弁護士に相談・依頼するメリット

風評被害は「削除したい」「特定したい」「賠償したい」と目的が混ざりやすく、順番を誤ると不利になることがあります。弁護士へ相談する主なメリットは次のとおりです。

  • 違法性の見込みを整理できる:削除や開示が通る類型か、争点は何かを早期に把握できる
  • 手段の選択と優先順位を決められる:任意削除・仮処分・開示・賠償・刑事の組合せを設計できる
  • 証拠の不足を補強できる:投稿特定情報や拡散状況の示し方を整えられる
  • 対応スピードを上げやすい:ログの期限を意識しながら、必要な手続を進められる

「削除依頼が通らない」「投稿が拡散している」「取引や採用に影響が出ている」「投稿者特定も検討している」といった場合は、できるだけ早い段階での相談が有益です。

お問合せ

相談前に準備しておくとよい資料

すべて揃っていなくても構いませんが、次の資料があると見立てが早くなります。

  • 問題の投稿のスクリーンショット(複数枚あると望ましい)
  • 投稿URL/投稿日時/投稿ID等のメモ
  • 拡散状況が分かる資料(引用投稿、検索結果、転載ページ等)
  • 被害の資料(売上推移、キャンセル記録、取引先からの連絡、受診記録等)
  • 希望するゴール(削除のみ/特定/賠償/刑事/再発防止)

よくある質問

口コミ(レビュー)は削除できますか?

評価が低いという理由だけで削除できるとは限りませんが、虚偽の事実、個人情報の暴露、差別的表現、脅迫的内容などは削除対象になり得ます。まずは証拠を確保した上で、媒体の窓口で申請し、難しければ法的手段を検討します。

事実が含まれていても風評被害として対応できますか?

「真実だから何を書いてもよい」というわけではありません。文脈や表現の方法、公益性などにより、違法と評価される余地がある場合もあります。一方で、公共性の高い論評等は削除が難しいこともあるため、個別に見込みを検討する必要があります。

匿名投稿でも投稿者を特定できますか?

発信者情報開示の手続により、特定できる可能性があります。ただし、ログの保存期間が限られることがあるため、早期に動くことが重要です。

どれくらいの期間で解決しますか?

任意削除であれば比較的短期間で動くこともありますが、削除仮処分や発信者情報開示など裁判手続が必要な場合、事案の難易度や相手方の対応によって変動します。目標時期(採用・出店・取引開始など)も踏まえて見通しを立てることが大切です。

自分(自社)で反論投稿をしてもいいですか?

反論自体が直ちに違法になるわけではありませんが、感情的な応酬は拡散を加速させ、かえって不利になることがあります。事実関係や表現のリスクを踏まえ、慎重に判断することをおすすめします。


まとめ

  • 風評被害は初動が重要で、まずは投稿の証拠(スクショ・URL・日時等)を確保する
  • 削除は任意対応から始め、難しければ弁護士名での要請や削除仮処分を検討する
  • 投稿者特定(発信者情報開示)にはログの期限があり、削除との順番に注意が必要
  • 損害賠償では営業損害等の立証資料の整理が重要になる
  • 目的(沈静化/責任追及)に合わせて、弁護士と手段と優先順位を設計する

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