誹謗中傷の証拠の残し方|スクショ・URL・投稿者特定のポイント|アイシア法律事務所

インターネット上で誹謗中傷を受けたとき、解決の可否を大きく左右するのが「最初にどんな証拠を、どの形で残したか」です。投稿が削除されたり、アクセス記録(ログ)が一定期間で消えたりすると、削除請求・投稿者特定(発信者情報開示)・損害賠償請求のいずれも進めにくくなります。

そこで本記事では、誹謗中傷の証拠を①侵害投稿そのもの②投稿者を特定する手掛かり③被害(損害)を裏付ける資料の3つに分け、集め方と注意点を整理します。

  • 誹謗中傷で「証拠」が必要になる場面(削除・開示・賠償・刑事)
  • スクリーンショットを証拠として使える形で残すコツ
  • URL・投稿ID・日時など、スクショだけでは不足しやすい情報
  • 発信者情報開示請求(開示命令)に向けた証拠の考え方とタイムリミット
  • 被害(精神的損害・経済的損害)を立証するための資料の例

誹謗中傷で「証拠」が必要になるのはどんなとき?

誹謗中傷の証拠は、単に「ひどい投稿があった」と示すためだけではありません。目的によって、必要な証拠の種類が変わります。

  • 削除請求:どの投稿が、どんな権利(名誉・プライバシー等)を侵害しているか
  • 投稿者特定(発信者情報開示):いつ、どのサービスで、どの投稿がされたか(ログと結び付ける)
  • 損害賠償:投稿によってどんな損害が生じたか(精神的・経済的)
  • 刑事手続:犯罪に該当する投稿であること、投稿者が誰か(または特定につながる情報)

つまり、「投稿の証拠」だけを集めても足りないことがあります。次の章から、具体的に何を残すべきか見ていきましょう。

最優先:侵害投稿を「その場で」残す(スクリーンショット)

誹謗中傷の証拠収集で最初にやるべきことは、投稿が消える前に画面を保存することです。スクリーンショットは有力な証拠ですが、撮り方を誤ると「どこの投稿か分からない」「加工の疑いがある」と扱われやすくなります。

スクリーンショットの撮り方(失敗しないコツ)

  1. 投稿の全文が読める状態で撮る(省略表示・折りたたみは展開する)
  2. 投稿者名/アカウントID/アイコンが同一画面に入るように撮る
  3. 投稿日時が表示される画面で撮る(相対時刻「1時間前」等だけは避ける)
  4. URLが分かる画面も残す(PCならアドレスバー込み、スマホなら共有メニュー等)
  5. コメント欄・返信・引用など文脈が分かる部分もあわせて撮る

可能なら、同じ投稿についてPC表示とスマホ表示の両方で保存しておくと、表示差による抜け漏れを減らせます。

スクショだけで不安なときは「印刷(PDF保存)」も有効

ブラウザの印刷機能を使ってPDFとして保存すると、ページ全体をまとまった形で残せます(スマホでも共有機能からPDF保存できる場合があります)。ただし、PDFも「どのURLを、いつ保存したか」が重要なので、後述のURL・日時の控えとセットで行ってください。

スクショだけでは不足しやすい情報(URL・投稿ID・日時の控え方)

スクリーンショットは強い一方で、裁判手続やサービスへの申立てでは、機械的に特定できる情報(URLや投稿ID等)を求められることがあります。次の情報は、できるだけテキストでも控えておきましょう。

  • 投稿のURL(パーマリンク):投稿単体に飛べるURLが理想
  • 投稿日時(タイムゾーン含む):表示が「○月○日」だけなら画面に年が出る箇所も保存
  • 投稿者情報:表示名だけでなく、@ID、ユーザーID、プロフィールURL等
  • 投稿ID/スレッド番号/レス番号:匿名掲示板では特に重要
  • 閲覧した日時:あなたがいつ発見し、いつ保存したか
  • 拡散状況:引用・リポスト、関連コメント、検索結果(上位表示)など

控え方は、メモアプリでも構いませんが、後から説明しやすいように「1投稿=1セット」でまとめるのがおすすめです(例:URL→スクショファイル名→保存日時→補足メモ)。

投稿者を特定するために重要な「発信者情報」と証拠の考え方

誹謗中傷の投稿者が匿名でも、手続を踏めば投稿者を特定できる場合があります。一般に、SNSや掲示板などのサービス提供者(コンテンツプロバイダ)が保有する情報と、インターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)が保有する情報を、段階的にたどっていきます。

このとき鍵になるのが、投稿とログを結び付けるための「いつ/どの投稿か」という特定情報です。スクショに加えて、前章のURL・投稿ID・日時を残す意味はここにあります。

発信者情報開示で扱われる情報の例

手続や事案により異なりますが、投稿者特定に関係する情報としては、たとえば次のようなものがあります。

  • IPアドレス(またはこれに準ずる識別情報)
  • 通信日時(タイムスタンプ)
  • ポート番号等
  • 登録メールアドレス・電話番号(サービス側の保有状況による)
  • 氏名・住所など(アクセスプロバイダが契約者情報として保有する場合)

制度の概要や進め方は、当事務所の解説ページも参考になります。

発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求の流れと手続き

タイムリミット:ログは永遠に残りません

アクセス記録(ログ)の保存期間はサービスやプロバイダによって異なり、永久に残るものではありません。数か月程度で消えることも珍しくないため、「落ち着いてから対応しよう」と先延ばしにすると、投稿者特定が難しくなるおそれがあります。

状況によっては、裁判所の手続を利用して、サービス提供者やプロバイダに対しログを一定期間消去しないよう求める措置(いわゆるログ保全)を検討することもあります。もっとも、要件や進め方は事案により異なるため、早期に専門家へ相談するのが現実的です。

特に、削除依頼を先に行うと投稿が消えてしまい、後から開示を検討したときに「対象投稿が特定できない」状態になることがあります。削除・開示・賠償のどれを優先するかは、状況により最適解が変わるため、早い段階で弁護士に方針相談するのが安全です。

損害賠償で必要になりやすい「被害(損害)の証拠」

誹謗中傷で損害賠償を請求する場合、投稿内容の証拠に加えて、「どんな被害が生じたのか」「投稿と被害に因果関係があるのか」を裏付ける資料が重要になります。典型例を挙げます。

精神的損害(慰謝料)を裏付ける資料

  • 受診記録・診断書(睡眠障害、うつ症状、適応障害等)
  • 服薬の記録、通院交通費などの領収書
  • 会社や学校での対応記録(休職・欠勤・配置転換等)
  • 誹謗中傷を見た第三者の証言(いつ、どこで見たか)

経済的損害(売上減・取引停止など)を裏付ける資料

  • 売上推移(会計データ、受注件数、予約キャンセルの記録)
  • 取引先からの連絡(取引停止のメール、問い合わせの増加)
  • 採用への影響(応募減、辞退理由の記録)
  • 対応コスト(削除依頼・調査・広報対応に要した費用の資料)

「どの数字を、どの期間で比較するか」などは争点になりやすいため、早めに整理しておくと後の負担が軽くなります。

刑事手続を検討するときの証拠(名誉毀損・侮辱など)

投稿内容によっては、名誉毀損罪や侮辱罪などの刑事事件として扱われる可能性があります。刑事手続では、投稿が犯罪の構成要件に当たるかどうかの判断に加えて、投稿者の特定に向けた手掛かりも重要です。

このため、民事の場合と同様に「投稿内容+特定情報(URL・日時等)」のセットが基本になります。さらに、脅迫的な内容、業務妨害が疑われる内容などは、前後の投稿ややり取りも含めて保存しておくと、全体像を説明しやすくなります。

証拠を「信用できる形」で保管するコツ

集めた証拠は、後から改ざんを疑われないように、できるだけ客観的・再現可能な形で保管します。

  • 加工しない:画像のトリミング・モザイク・書き込みは原則避け、原本を別保存する
  • 複数箇所にバックアップ:端末だけでなくクラウドや外部ストレージにも保存する
  • 時系列で管理:発見日、保存日、削除された日(確認日)をメモしておく
  • 関連ページも保存:プロフィール、スレッド全体、引用元、検索結果など

「どこまでやれば十分か」はケースによって異なります。拡散が早い案件や、会社の信用に直結する案件は、早期に専門家へ相談し、証拠の取り方を含めて戦略を組むことが重要です。

やってはいけない行動(被害者・加害者それぞれ)

誹謗中傷の局面では感情的になりやすいものですが、対応を誤ると不利になったり、別のトラブルを招いたりします。

被害者側:避けたい行動

  • 同じ土俵で言い返してしまう(反撃投稿が新たな紛争の火種になる)
  • 相手の個人情報を晒す・拡散する(プライバシー侵害等のリスク)
  • 不正アクセスなど違法な方法で情報を取ろうとする

加害者側:軽い気持ちの投稿でも責任が生じることがあります

  • 投稿の削除だけで済むと思い込み、放置する
  • 証拠隠しのためにアカウントを消す・投稿を消す(状況によっては不利な評価につながる)
  • 相手に直接接触して圧力をかける(脅迫等の疑いが生じ得る)

弁護士に相談するときに用意しておくとよいもの

相談時点で完璧にそろっていなくても構いませんが、次の資料があると状況把握が早くなります。

  • 投稿のスクリーンショット(できれば複数枚)
  • 投稿URL、投稿日時、投稿ID等のメモ
  • 拡散状況が分かる資料(引用・リポスト、関連スレなど)
  • 被害の資料(診断書、売上推移、取引先の連絡等)
  • 希望するゴール(削除、特定、賠償、刑事、再発防止など)

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よくある質問

投稿が削除された場合でも、証拠は残せますか?

削除前にスクリーンショットやPDF保存ができていれば、一定の証拠になります。ただし、削除後に初めて気付いた場合は、キャッシュや引用・転載など周辺事情から手掛かりを探すことになります。ログの保存期間もあるため、早めの相談が重要です。

スクリーンショットは「加工すると無効」になりますか?

直ちに無効になるとは限りませんが、加工があると改ざんを疑われやすくなります。どうしてもマスキングが必要な場合でも、加工前の原本を別に保存し、提出時には「原本と比較できる状態」を確保しておくのが安全です。

匿名掲示板でも投稿者を特定できますか?

可能な場合があります。ただし、サービスや接続環境により、開示できる情報の範囲や難易度は変わります。投稿内容の違法性・権利侵害の明白性、そしてログが残っているかが重要になります。

誹謗中傷の証拠は、何年でも使えますか?

保存しているデータ自体は残せますが、投稿者特定に必要なログは保存期間が限られることがあります。また、損害賠償請求には消滅時効などの問題もあり得ます。具体的な期限は事案によって異なるため、早めに個別相談してください。


まとめ

  • 誹謗中傷の証拠は「投稿」「投稿者特定の手掛かり」「被害資料」の3種類で考える
  • スクショは投稿内容・投稿者・日時・URLが分かる形で複数枚残す
  • URL・投稿ID・閲覧日時などはテキストでも控え、「1投稿=1セット」で管理する
  • ログには保存期間があるため、方針(削除/開示/賠償)を早めに決めることが重要
  • 診断書や売上推移など、被害の証拠も並行して集めると後の負担が減る

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